森保ジャパンの歯車が狂い始めた。データが示すベネズエラ戦の失敗 (2ページ目)

  • 中山 淳●文 text by Nakayama Atsushi
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 これは森保兼任監督だけのミスではなく、JFA(日本サッカー協会)全体として大いに反省すべき点だ。兼任監督という選択は本当に正しいのか? 今回のスケジューリングに無理はなかったのか? 現場の監督だけでこの難題を解決させることはできないはずだ。

 そんななか、森保監督はこのベネズエラ戦にどのような狙いを持って臨んだのか。その答えは、スタメン編成からも見て取れた。

 GKはベテランの川島永嗣を選択し、DFには室屋成、植田直通、畠中慎之輔、佐々木翔を、MFには原口元気、柴崎岳、橋本拳人、中島翔哉を、そしてFWには鈴木武蔵と浅野拓磨を起用。システムは、いつもの4-2-3-1ではなく、攻撃時も鈴木と浅野を並列にする4-4-2を採用した。

 試合後、「すべて勝つつもりで準備してメンバーを編成して臨んだが、勝利につながったのは1試合で、2連敗した」と指揮官が振り返ったように、ベネズエラ戦の位置付けに新戦力発掘を含めたテスト的な意味合いがなかったことは、先発リストからも読み取れる。とくにGKに中村航輔ではなくベテランの川島を起用したのはその象徴で、フィールドプレーヤーの10人全員が森保ジャパンで先発経験を持った選手が名を連ねている。

 今後のチーム強化という視点に立てば、川島ではなく若い中村を起用して経験させるほうが得策だ。初選出組は別としても、たとえば車屋紳太郎、大島僚太、井手口陽介といった代表経験を持つ戦力を先発起用するのも、底上げという意味では有効だと思われる。

 しかし、あくまでも森保監督は勝つためのベストメンバーにこだわった。今回の招集メンバーリストを作成する段階から決めていたのだろうが、結果的にその選択が惨敗のダメージをより大きくしたことは否めない。新戦力のテストもできず、戦力の底上げも果たせず、その結果、収穫なき敗戦という結末を迎えたからだ。

 一方、この試合で4-4-2を採用するのも、予め決めていたと見ていいだろう。それは、ベネズエラ戦の登録メンバーからもうかがえた。

 スタメンの鈴木と浅野のほかに、サブに入っていたアタッカーはCF系の永井謙佑とオナイウ阿道。古橋亨梧はサイドアタッカーであり、井手口もオフェンシブMFでプレーできるものの、本来はボランチの選手。少なくとも1トップ下の選手ではない。

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