森保J完敗は必然か。W杯未出場国ベネズエラの指揮官が戦略を語る (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 ベネズエラは戦略で優った。

「自分たちは常に戦う前から、相手の長所はどこかと考える。それを制御するために準備する。その試合ができた」

 ドゥダメルはそう言うが、見事な采配だったと言えるだろう。

 ベネズエラは4-1-4-1のシステムだったが、インサイドハーフのトマス・リンコン、ヤンヘル・エレーラの2人が縦横にプレーを引き回していた。中盤から積極的に前へ出て圧力をかけ、奪ったボールを前に運ぶ。それぞれセリエA(トリノ)、リーガ・エスパニョーラ(グラナダ)でプレーする2人は、スペイン2部でも試合に出られない柴崎岳(デポルティーボ・ラ・コルーニャ)を完全に凌駕していた。

 中盤でイニシアチブを取れたことによって、ベネズエラは先手を取った。そのアドバンテージによって、今度は両サイドでブラジルの名門サントスに所属するジェフェルソン・ソテルド、スペインで前半戦のサプライズになったグラナダのダルウィン・マチスが躍動した。国際大会の経験の乏しい、日本のサイドバックを狙い撃ちにした。

 ソテルドの仕掛けから室屋成(FC東京)を抜き去って上げたクロスを、サロモン・ロンドンが佐々木翔(サンフレッチェ広島)に競り勝ってヘディングで合わせた先制点は象徴的だった。日本の守備をサイドから籠絡し、中を混乱に追い込みながら、点で合わせる。4得点は多かれ少なかれ、その形だった。

 後半は、ベネズエラのプレー強度や精度が低下している。4点のリードという心理マネジメントは難しい。どうしても、受け身に立つからだ。

「ハーフタイムには、『真剣さをもって、相手に敬意を表し、同じインテンシティで戦おう。失点はゼロのままで』と選手に伝えた。選手の姿勢は前半と一緒だった。しかし、日本は得点の必要に迫られ、ラインをあげ、プレスをかけてきた。我々はそれを回避するために、ラインをひとつ飛ばして前線のロンドンに蹴り込む機会が増えざるを得なかった。プレーインテンシティのレベルは下がってしまったと思う。その点、もっと効果的に試合を進められたと反省している」

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