森保Jに停滞感。キルギス戦では
アジア杯決勝と同じミスを繰り返した

  • 中山 淳●文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by KYODO

 いずれにしても、ほぼベストメンバーを編成して試合に臨んだにもかかわらず、試合は立ち上がりから日本がリズムをつかむことができず、苦しい展開が続いた。

 そのなかで目立っていたのが、最終ラインからのビルドアップ時にボールホルダーがパスコースを見つけられず、困った末にロングボールを蹴るシーンだ。とくに吉田がボールを持った時、前線の選手にもっと動くように腕を振るジェスチャーを繰り返していたことが、その状況を象徴していた。

 そうなってしまった最大の要因は、キルギスを率いるアレクサンデル・クリスティニン監督が準備した日本対策にある。

 この試合の日本の布陣は、いつもの4-2-3-1。対するキルギスは、昨年11月に対戦した時の5-4-1ではなく、3-5-1-1(3-3-3-1)を採用。今年のアジアカップ決勝で日本が敗れた試合で、対戦相手のカタールが採用した布陣である。

 しかも、前線からのディフェンス方法はカタール以上に徹底されていた。日本の武器であるボランチからの縦パスを封じるべく、日本のビルドアップ時には1トップ下の8番(グルジギト・アリクロフ)が遠藤に、右MFの22番(アリマルドン・シュクロフ)が柴崎をそれぞれマーク。1トップの10番(ミルラン・ムルザエフ)がボールホルダーに対してコースを限定しながらプレッシャーをかけることによって、前線から圧力をかけた。

 いつものルートを使えない日本にとって、ビルドアップの次の出口は両サイドバックとなるが、右の酒井に対しては左MFの21番(ファルハト・ムサベコフ)が絶妙な距離にポジションを取り、左の長友に対しては右ウイングバックの6番(ビクトル・マイヤー)がしっかり監視。結局、近場のパスコースを失った吉田と植田、あるいはパスをもらっても次のパスコースが見つからない長友と酒井は、相手の圧力に屈して仕方なく前線にロングボールを蹴ることを強いられた。

 そして、相手の意表を突いたなかで入れるロングフィードではなく、相手がしっかり構えているなかで放り込むので、成功する確率は必然的に低くなる。その結果、日本は落ち着いてボールキープすることができず、相手の反撃を受ける回数も増加した。

 もちろんすべて同じことが繰り返されたわけではないが、先月のタジキスタン戦と同じく、またしても日本は「ボールの出口」を見つけ出すのに四苦八苦した。

 日本がリズムをつかめない状況は、縦パスの本数にも表われた。敵陣で記録した前半の縦パスは7本のみ(成功4本)。生命線でもあるボランチからの縦パスは、柴崎が1本、遠藤が2本で、遠藤に至っては2本とも不成功に終わっている。

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