メディアにも隠し通した窮地。「谷間の世代」が乗り越えた壮絶な戦い (3ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・構成 text by Sato Shun
  • 甲斐啓二郎●撮影 photo by Kai Keijiro

「闘莉王がいなくなって、チームは大きく動揺しましたね。彼は攻守の要であることはもちろん、『おとなしい』と言われたチームにあって、ガンガン物を言う異色の存在で、その存在がチームにとって非常に大きかった。そういう選手がいなくなったのは、痛かった」

 闘莉王に代わって、急きょ阿部が入った。また、左のウイングバックには追加招集された根本が初スタメンで入っていた。主力が下痢の影響で動きが重かったせいもあり、全体の連係がうまくかみ合っていなかった。

 結局、決定的なチャンスを作れず、逆に相手のカウンター戦術にハマッて、0-1で初戦を落としたのである。

「『スベッたな』って思いましたね。『これはヤバいな』って。UAEラウンドで積み重ねてきたものが、このバーレーン戦に敗れたことで、一瞬にしてなくなった。しかも、内容的にも酷かった。攻撃の形を作れず、焦っていくなかで1点取られた。相手は5本しかシュートを打っていないんですよ。でも、そのうちの一発にやられた。この敗戦のショックは大きかった」

 UAEも日本ラウンドの初戦でレバノンと引き分け、この時点でUAEとバーレーン、そして日本が勝ち点7で並んだ。次のレバノン戦で日本が敗れ、UAEとバーレーンの試合でどちらかが勝てば、日本はかなり危機的な状況に追い込まれることになる。

 もう負けられない状況のなか、山本監督はレバノン戦でフレッシュな近藤と阿部を最終ラインに配置した。コンディション不良で初戦を欠場した平山と森崎を先発復帰させ、"切り札"の大久保もスタメンで起用し、勝負に出た。

 だが、この大事な試合のスタメンに、キャプテン鈴木の名前はなかった。

「試合前日に、昌邦さんから『明日は(試合に)出さないから、最終戦に備えてくれ』と言われたんです。でも(自分は)それを額面どおりには受け取れなかったですね。だって、レバノンに負けたら、終わりなわけですよ。(自分は)その試合に勝つためなら『次に出なくてもいい』という覚悟でしたし、そのぐらい大事な試合だったんです。その試合に出られない......自分の実力のなさもあるけど、ほんと悔しかった」

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