森保ジャパン、異例の「9人入れ替え」。その編成をどう評価するか (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by AFLO

 その大半を占めたのが欧州組で、彼らは2カ月続けて所属チームを10日間以上離れる負担を強いられた。それはいかがなものかと述べた人は、筆者以外にも多くいた。10月のモンゴル戦、タジキスタン戦に招集され、マジョルカを長期間離れたものの、出場時間はタジキスタン戦の数分間。マジョルカに戻って4日後に行なわれたレンタル元のレアル・マドリード戦に先発できなかった久保に対して、同情の声は多く集まった。

 森保監督の耳にもそうした声は届いたものと思われる。今回、キルギス戦を終えて日本に移動し、ベネズエラ戦に臨む海外組は7人にすぎない。9月、10月の反省に基づいているとすれば、評価したい。

 だが、冒頭で述べたアジア2次予選との向き合い方には相変わらず懐疑的である。

 キルギス代表、Uー22コロンビア代表、ベネズエラ代表。今回、日本代表とUー22日本代表が戦う3チームの中で、ダントツに弱いのはキルギスだ。

 強化という視点で考えれば、3日後の17日にUー22コロンビア代表戦が控えるものの、U-22日本代表をキルギス戦にぶつけるのが、一番理に適っている。一番弱い相手にベストメンバーをぶつけても強化にはならない。過去3戦(モンゴル、ミャンマー、タジキスタン)同様、ミスマッチになることは見えている。

 その一方で、一番強そうなベネズエラ戦には、ベストメンバーを充てず、代表初選出の4人(進藤亮佑、荒木隼人、古橋亨梧、オナイウ阿道)を含めて、キルギス戦には選ばれていない国内組9人を新たに招集した。連戦となる欧州組にしても、GKを除けばスタメン級は柴崎岳(デポルティーボ)と中島翔哉(ポルト)ぐらいだ。森保監督の従来の評価に従えば、2軍あるいは代表予備軍ということになる。

 ただ、キルギス戦を戦うメンバーはこちらでも十分なのだ。その方が同じく強化ということを考えれば、効果的である。さらに基本的なことを言うならば、なぜベストメンバーとその他に分け、別々に戦わせるのか。ベストメンバーをベースにしながら、その中に予備軍的な選手を混ぜ込んだ方が、代表のコンセプトは広く浸透する。それを繰り返すことにより、誰が出ても遜色ない代表チームが構築されていくのだ。

 代表チームにおけるベストメンバーの寿命は短いものだ。2年後には3、4人、3年後のカタールW杯開催時には半分は入れ替わっていると考えるのが自然だ。にもかかわらず、この2次予選の段階から毎度ベストメンバーを編成すれば、チームが先細りしていくことは見えている。循環のスタイルとして非効率的だ。いまは3年後に備え、その時に使えそうな選手の数を増やしておくことが、代表監督に課せられた使命なのである。

 森保監督の選手選考の常識は、申し訳ないが古い。日本がまだたいして強くなかった、それこそ20年前の発想だ。選手のクオリティーが上昇している分だけ、その古さは目立つ。選手と監督、どちらが世界的かと言えば、選手であることが明白だ。AチームとBチーム、さらにはUー22というCチームを別々に強化するのは、どう見ても非効率だ。

 前回ロシアW杯のように、本番の2カ月前に代表監督が代わってもなんとかなってしまう場合があるのがサッカーだ。そこまでどのように畑を耕すか。現状の耕し方には問題がある。いったいベネズエラ戦を戦うBチームは、いつ、どうやってトレーニングするのか。連戦となるAチームの数人とコンビネーションを確認する時間はどれほどあるのか。

 その強化の計画に、今回のメンバー選考を見て、あらためて異を唱えたくなるのである。

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