見えてきた大迫不在時の攻撃パターン。カギを握るふたりのアタッカー (3ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Getty Images

 森保監督は、右MFには左利きの堂安、左MFには右利きの中島翔哉をスタメン起用することが多い。これはサイドから中央に切れ込みながら、FWの大迫やトップ下の南野との連係から相手DF陣にギャップを生じさせて、シュートに持っていく狙いがあるからだ。

 堂安は中央で待つ大迫や南野にパスしてからゴール前に走り込み、リターンをもらってのシュートを得意とする。しかし、大迫不在時は、堂安が切れ込んでも、ゴール前は敵味方の選手が混み合うケースが多く、シュート機会をつくるのが難しくなっている。

 これに対して、右利きの伊東はスピードを生かして単独で右サイドをタテに深くえぐるので、相手DFは中央からサイドに引き出され、ゴール前には味方選手が使えるスペースができる。さらに、伊東のクロスはピンポイントで合わせる精度の高さがあるため、高さがさほどない日本代表でも、ポジショニングとタイミングでヘディング勝負が可能になる。また、伊東は連係プレーだけでなく、単独突破で崩すこともできるので、ボールを奪われた場合のリスクが減る。

 伊東はスピードもあるのでカウンター速攻も狙えるし、左サイドから攻撃を組み立てるときにはゴール前で得点する能力もある。これまで右サイドは堂安の存在感が際立っていたが、所属のヘンクでチャンピオンズリーグにも出場し、経験を積む伊東が輝きを放ったことで、攻撃の選択肢が増えたと言えるだろう。

 もちろん、大迫の代わりとなるFWを探しながらも、ほかのポジションでも新たな可能性を試していく。これは日本代表全体の選手層を厚くすることにつながるので、今後も続けてもらいたい。

 FWは、モンゴル戦でゴールを決めた永井謙佑(FC東京)や、タジキスタン戦で得点した浅野拓磨も招集されたが、今回未招集の若手FWにフォーカスすると、上田綺世(鹿島)や前田大然(マリティモ)、鈴木優磨(シント・トロイデン)、鈴木武蔵(北海道コンサドーレ札幌)らもいる。武藤嘉紀(ニューカッスル)も含め、まずは所属クラブでしっかりと試合に出て、存在感を高めてもらいたい。

 来年は東京五輪後にU-23代表から多くの選手がA代表に加わる可能性がある。さらに競争が激しくなるなかで、大迫とは異なるタイプのFWや、大迫に匹敵する能力の選手がさらに多く現れてくれることに期待したい。

◇プロフィール 福田正博(ふくだ・まさひろ)
1966年12月27日神奈川県生まれ。176cm。日本リーグ時代、三菱(現・浦和)に入団し93年からJリーグへ。95年50試合32得点で、日本人初のJリーグ得点王に。日本代表45試合9得点。02年現役引退。S級ライセンス取得後、2008年から浦和レッズコーチに就任。現在はサッカー解説者として『SUPER SOCCER』(TBS)など各媒体で活躍。

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