タジキスタン戦で森保ジャパンは戦術の積み上げがあったのか? (4ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AP/AFLO

 しかしこの試合のタジキスタンのように、相手にアグレッシブにプレッシャーをかけられると、問題が一気に露呈。4-2-3-1にも3-4-2-1にも見えない、左右非対称な布陣で戦ったことが、最終ラインからのビルドアップに悪影響を与えた。

 CBからビルドアップを開始するとき、相手のプレスを回避するための「ボールの出口」をいち早く確保することが、試合を落ち着かせるための条件になる。

 ところがこの試合の日本は「ボールの出口」を見つけられず、相手のプレッシャーを回避するためのロングボールを蹴って簡単に相手にボールを渡したり、無理なパスを入れて引っかけてしまったりするシーンが続いた。

 たとえば、ボランチ1枚がCBの間に落ちる方法も「ボールの出口」を見つけるひとつになるはず。実際、試合終盤に近づくにつれ、柴崎か橋本が両CBの間に落ちてビルドアップを開始するシーンが増えると、攻撃における左右のバランスも改善された。

 左右のバランスがよくなれば、自ずと縦パスから始まる中央攻撃も効果を示す。81分、柴崎の縦パスを受けた堂安が南野とダイレクトでパス交換を行ない、最後にボックス内でフリーになった浅野が決定的シーンを迎えたのが、その典型だ。酒井のアーリークロスを浅野がヘッドで沈めたのは、その効果的な中央攻撃の直後のことだった。サイド攻撃と中央攻撃をバランスよく織り交ぜた、森保ジャパンらしい攻撃を見せたシーンだ。

 ただ、もし後半の早い時間帯で南野の連続ゴールが生まれていなかったら、タジキスタンの勢いが止まることなく、日本にとっては最後まで苦戦が続いた可能性は否定できない。相手がタジキスタンではなく、アジア最終予選もしくはW杯本大会に出場するレベルのチームが相手なら、「ボールの出口」を見つけられないことが致命傷となる可能性は高い。アジアカップ決勝のカタール戦が、そうだった。

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