タジキスタン戦で森保ジャパンは戦術の積み上げがあったのか? (3ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AP/AFLO

 しかも左からのクロス2本は、前半終了間際の45分に中島が入れた1本(ゴール前で南野拓実がフリーでヘディングシュート)と、前半のアディショナルタイム2分に鎌田が入れた1本(相手DFがブロックしてコーナーキック)のみ。後半も右6本、左2本と、左右のバランスが改善されることはなかった。とくに左SB長友が1本もクロスを入れられなかった。

 この試合の5日前に埼玉スタジアムで行なわれたモンゴル戦では、前後半合わせてクロスが計45本と過去最高を記録していたことを考えると、そもそもこの試合の日本はクロスボール攻撃が少なすぎた。

 森保ジャパンの攻撃の基本コンセプトは、左右の幅をしっかりとったうえで、中央への縦パスとサイドからのクロスボールをバランスよく織り交ぜることだったはずだ。しかし自らの形を見失っていたために、この試合の日本はクロスが減少。左右のバランスも崩れていた。格下相手に日本が主導権を握れなかった原因でもある。

 なぜ中島のボールロストが解消されたにもかかわらず、左右の攻撃バランスが改善されなかったのか? そこで浮上してくるのが、全体の選手の並び、つまり4-2-3-1の布陣が乱れていたことである。

 森保ジャパンの4-2-3-1は、攻撃時は3-4-2-1的になる。マイボール時にビルドアップを開始する際、ボランチ1枚が両CBの間に落ちて3バックを形成するか、もしくは右SBの酒井宏樹が高いポジションをとって左SBの長友が右にスライドし、3バックを形成するパターンだ。

 ところが、最近は3-4-2-1に可変する形はほとんど見られなくなっている。とくにここ数試合は格下相手の対戦が多いため、2バックのままでゲームを支配できてしまっていることが、オフェンスシステムの機能に悪影響を及ぼしていると考えられる。

 3バックを形成せずに、両SBが高い位置をとってボールを保持し、左右からクロスの雨を降らせたモンゴル戦がその典型だ。

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