タジキスタン戦で森保ジャパンは戦術の積み上げがあったのか? (2ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AP/AFLO

 目立っていたのが、左ウイングの中島翔哉のボールロストだ。立ち上がりからボールをキープできない日本は、中盤に下がってくる中島に一旦ボールを預けて相手のプレッシャーを回避しようと試みたわけだが、苦し紛れのパスを受けた中島の次のパスコースは塞がれていた。

 そのため、中島は得意のドリブルで相手をはがして局面打開を試みるも、狙われていたかのように2、3人に囲まれてボールロストを繰り返した。

 立ち上がり10分間で、中島がボールを失った回数は6回。これまでの試合で、これほど集中的に中島がボールを失ったケースは見当たらない。これがタジキスタンの狙いだったとすれば、日本はまんまとその罠にはまったことになる。試合序盤の日本が、主導権を握れなかった要因のひとつと言える。

 しかし、その現象は長くは続かなかった。日本が解決策を意外と早く見つけたからだ。

 前半9分、セットプレーの準備の間に森保監督が長友佑都を呼んで会話をかわすと、伝令を受けた長友が柴崎岳の下へ駆け寄って何かを伝えたシーンがあった。その後の日本の戦い方に変化が見られたことは確かだった。

 そのひとつが、ダブルボランチの配置だ。

 キックオフ直後は左に柴崎、右に橋本という並びだったが、その後は左右が入れ替わり、左に橋本、右に柴崎へと変化した。これまでの試合でも、流動的にダブルボランチが左右で入れ替わることはよくあったが、その後、日本の攻撃が中島とは反対の右サイドに集中したことからすると、森保監督は、中島が狙われていたためにボールロストを繰り返していたことを長友に伝えた可能性は高い。

 日本が右サイドから攻撃を続けたことで、タジキスタンの最終ライン4人と中盤5人は左サイドに寄らざるをえなくなり、その段階で中島のボールロスト問題はほぼ解決している。

 しかし、それによってその後の日本の攻撃が極端に右サイドに偏ってしまった点が問題だった。たとえば、この試合で日本が入れたクロスボールは、前半7本、後半8本の計15本。前半の左右の内訳は、右が5本で左が2本だった。

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