森保Jが前半、苦戦した理由。順当勝利に潜む「非効率」と「浪費」 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by AP/AFLO

 アウェー戦ということも慎重になった理由だろうが、長友と中島はこの日に限らず、毎度、良好な関係にはない。中島の売りはドリブルだ。変幻自在な細かなステップで相手を翻弄しようとする。その何をするかわからない雰囲気を、相手のみならず、自軍の選手に対しても発露させてしまっているのだ。長友は中島のアクションにどう反応していいか、思いあぐねているように見える。

 長友が中島の前にコンビを組んでいたのは乾貴士(エイバル)だが、コンビとしての魅力はこの2人の方が勝っていた。とりわけロシアW杯では息の合ったプレーを披露。日本のベスト16入りを語る際、外せない要素になる。

 そうした魅力がいまの左サイドには欠けている。中島がドリブルして、中に、中にと入っていくという、それのみのプレーに終始している。プレーが限定されることで、おのずとチームとしてボールを保持する時間は短くなる。個々の実力に大きな差がある割には、だ。

 モンゴル戦の永井謙佑(FC東京)に代わり、センターフォワード(CF)として先発したのは鎌田大地(フランクフルト)だった。しかし、彼が得意とするポジションはそのひとつ下だ。実際、南野拓実(ザルツブルク)とポジションは重なりがちになった。CF不在のサッカーに陥った。

 ただ、そのこと自体、さほど問題はない。いわゆる「0トップ」は、本田圭佑をそこに据え、南アフリカW杯本大会に臨んだ過去もある。

 しかしその時は、その分だけ両サイドが高い位置を取る必要がある。サイドの高い位置でボールが収まる状態になっていないと、全体のバランスは整わない。鎌田を起用するなら、中島、堂安はなおさらサイドの高い位置に張るように構え、そこでSBとコンビネーションを図るべきだった。

 後半に入っても前線の4人とSBの関係は前半と変化なしだった。日本が3点を奪うことができた理由は、力の差そのものになる。人工芝にも慣れ、アウェーの雰囲気にも慣れれば、少々非効率なサッカーを展開しても、ピッチ上はそれを割り引いても余りある実力差が支配することになる。

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