モンゴルに感謝。W杯予選で日本代表は絶好の「強化試合」をこなせた (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 牛島寿人●撮影 photo by Ushijima Hisato

 また、遠藤とダブルボランチを組んだMF柴崎岳は、「細かい部分で(ボランチの)ふたりの関係をオートマティックにするために、ふたりで話しながらやっていた」と言っていたが、そうしたところを詰めていくには、うってつけの機会だったかもしれない。

 実力差を考えれば、日本が勝って当然。取り立てて褒め称えるような試合ではない。だが、思いのほか、この試合にダレた印象がなかったのも事実だ。

 ワイス監督も「ゲンクやマルセイユでスタメンの選手がいるのだから、当然」としたうえで、「(日本の)右サイドから得点されていた。スピードについていけなかった」と語っていたが、日本が主に右サイドから6つの得点を奪えたのは、単に個々の能力の差があったからというだけではないだろう。森保一監督が語る。

「モンゴルが我々の戦い方を分析し、堅い守備をしてきたが、選手が流れや状況を考えて攻撃してくれた」

 右サイドで縦に並ぶMF伊東純也、DF酒井宏樹に加え、中央のMF南野拓実や遠藤が効果的に絡むことで、再三DFラインの裏を取った。「賢く戦う」とは森保監督の口癖だが、日本はモンゴル戦を、いわば"絶好の練習試合"にし、連係を深めようとしていた。

 ワールドカップ出場を当然のノルマとし、ワールドカップでのベスト8進出を目標に掲げる日本にとって、率直に言って、アジア予選、とくに2次予選が強化の足かせになっている側面があることは否めない。それこそが、アジアに属しながら世界を目指すことの難しさと言ってもいい。

 実力差が大きい試合は、結果が苦戦であろうと、大勝であろうと、どうしても大味な内容になり、締まらない展開になりがちだ。

 ところが、この試合はそうはならなかった。その点で言えば、なりふり構わず戦うのではなく、あくまでも"常識"に沿って正々堂々と挑んできたモンゴルに、日本は感謝すべきなのかもしれない。

 月に一度しか集まることができない日本代表にとっては、世界183位との対戦も、意外と貴重な強化の場だったのではないかと思う。

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