長谷部誠の後継者はこの男か。橋本拳人がJ唯一の先発で存在感を示す (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 実は、2得点とも起点になっている。

 23分、センターサークル付近でボールを受けた橋本は、左サイドから中央のギャップに入った中島翔哉(ポルト)に対し、迅速な判断で球足の速いボールを入れた。これを中島はダイレクトで横にいた堂安律(PSV)に弾き、さらに堂安が左サイドの長友佑都(ガラタサライ)へ展開。そのニアへのクロスを大迫勇也(ブレーメン)が左足で叩き込んだ。

 30分、橋本はバックラインとのパス交換後、前が詰まっていたことで、左サイドへドリブルでボールを運び、敵2人を引き付ける。この動きで中央に寄った中島をフリーにし、すかさずパス。中島ががら空きになった逆サイドへパスを流し、走りこんだ酒井宏樹(マルセイユ)のクロスを南野拓実(ザルツブルク)が右足でねじ込んだ。

 橋本は供給役としての仕事を完ぺきにこなした。その単純明快さは、プレーインテリジェンスに置き換えられる。

「前の4人(中島、南野、大迫、堂安)は、ここっていうポジションに入ってくれるので、パスはつけやすいです。特に(中島)翔哉とは(FC)東京でもやっていましたが、フィジカルが強くなったし、とにかく1対1で取られない。あそこで(マークを)外してくれるから、他もフリーになるというか」

 パラグアイ戦後、橋本はそう振り返っている。とりわけ、中島へのパスの質は高かった。次のプレーに移行するアドバンテージを与えていた。

 ボランチとしての橋本の特長だ。

 橋本はユーティリティーとして、複数のポジションをプロで経験している。右サイドバック、センターバック、FW、攻撃的MF、トップ下......GK以外はすべてに近い。戦術的能力の高さで適応できるわけだが、この点も長谷部に通じる。オーケストラの指揮者のように、どのポジションの選手の立場にもなれることで、それぞれの能力を引き出せるのだ。

 もっとも、橋本が長谷部の領域にたどり着くには、試合経験を重ねる必要がある。パラグアイ戦も、後半は途中出場の選手が次々と入って、攻守のバランスは崩れた。前がかりになって、攻め急ぎが目立った。

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