長谷部誠の後継者はこの男か。
橋本拳人がJ唯一の先発で存在感を示す

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 9月5日、茨城県立カシマサッカースタジアム。気温は下がったが、湿度は84%と空気は粘りつくようだった。日本は、南米の伏兵・パラグアイを迎えていた。

 試合開始直後、MF橋本拳人(FC東京)が鋭い出足を見せる。前へボールを運ぼうとする敵の勢いを、ぴしゃりと叩いた。2度続けて相手のボールを寄せ返し、3度目に自らのボールにし、左サイドに展開した。出足をくじかれたことで、パラグアイの動きは鈍くなった。

 パラグアイ戦で中盤をコントロートしていた橋本拳人 パラグアイ戦で中盤をコントロートしていた橋本拳人 その後、橋本は無理にボールを奪いに出ていない。ポジション的優位を取ることでスペースを与えず、バックラインと一体になって、強固な防御線を張った。攻撃センスの高い柴崎岳(デポルティーボ)の攻め上がりを促しつつ、前線の選手たちにボールを供給し、その背後を補完。安定した守備でカウンターを封じ、同時に攻撃も作り出した。

 攻守一体の軸――。それはロシアワールドカップまで、長谷部誠(フランクフルト)が果たしていた役割だった。

 この日、先発した11人の中で、唯一のJリーガーだった橋本は、偉大なMFの後を受け継ぐだけのポテンシャルを示した。

「世界で戦ってきた選手の傍でプレーすることで、刺激にはなりました。テレビに出ていた選手はオーラあるなって(笑)。一緒にやっているって楽しいって」

 今年3月、1-0で勝利したボリビア戦で先発、代表デビューを飾った橋本は、闊達にそう語っていた。

「でも、"そこでパスを戻してもらえば活かせるのに"と思ってもリターンがない。まだまだ信頼されていないんだなと感じました。もっと自分のプレーを伝えることも必要だと思いましたね。正直、やれる、という実感は得たので、これからです」

 6月のエルサルバドル戦では再び90分プレーし、2-0の勝利に貢献。攻守両面で、着実に存在感は増していた。

 そしてこの日、2-0と勝利したパラグアイ戦は、主力の風格すらあった。物事を複雑化しない。橋本のボランチ(舵取り)としてのよさはそこにある。

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