久保建英がバロンドール級になるために必要なのは「縦への推進力」だ (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 前半34分、堂安に見せ場が訪れた。そのまま縦に抜けて出ればチャンス到来というシーンで、堂安はその場で相手が寄ってくるのをわざわざ待ってしまった。そしてその相手を抜きに掛かろうとした。間の悪い動きを披露した。直後、縦抜けを決めていればそれは帳消しになったが、そこで仕掛けたフェイントにキレ味はなく、結局、ボールをロストするハメになった。

 右サイドで縦に出るプレーを得意にしていないことが白日のもとに晒された瞬間だった。その時、ウォーミングをアップしていた久保建英(マジョルカ)ならば、楽々チャンスを構築したのではないかと想像したくなるシーンでもあった。

 その久保は、後半頭から堂安のポジションで出場した。久保の代表戦の出場はこれが5試合目。4-2-3-1の3の右での出場は、コパ・アメリカのウルグアイ戦に次いで2度目だ。森保監督はこれまで久保を主に1トップ下で起用してきた。ちなみにこの試合の直前、マジョルカでスペインリーグデビューを飾った試合(バレンシア戦)もプレーしたのは右。右ウイングと言うべきか、右サイドハーフと言うべきかは微妙ながら、縦への推進力が求められるポジションでおよそ15分間プレーした。

 バレンシア戦ではボールがなかなか回ってこなかった。プレー機会は3回程度に過ぎなかったが、このパラグアイ戦では、ピッチに立つやただちに訪れた。

 その動きが堂安を上回っていたのは、堂安が真ん中の密集に入る時間が長かったのに対し、久保は「3の右」に相応しいオーソドックスなポジションを取ったことも、大きな理由だろう。久保は周囲の選手が視界に捉えやすい位置で構えていた。

 しかし、肝心のプレー自体は、率直に言ってイマイチだった。コンディションが悪いのか、身体が重そうに見えた。プレーも軽かった。足先で誤魔化そうとする、悪い意味で中盤的な動きに終始した。アタッカーには必須となるダイナミックな、縦への推進力に欠けていた。見たくないプレーを見てしまったという印象だ。

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