女子サッカー選手が描く新しい地図。未来のための「なでしこケア」 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

「女子サッカーの課題として一番感じていたのがプロ意識。そこが日本の選手には絶対的に欠けていた。それはプロとしてお金をもらっているとかいないとかではなくて、自分が日本のトップリーグでプレーしている責任とか、覚悟とかそういうのが足りない。何となく大学とかから同じ生活リズムなんです。練習前に勉強していたのが仕事になって、生活に変化がないまま、ステージが変わっている感じがしないんだと思う。まずそこを変えていくためのワークショップをやりたいと思った。それが第一歩ですね」(大滝)。

 実はこのなでケアは今からちょうど1年前、正式に立ち上げを視野に入れながら選手のためのワークショップを開催している。国内外で活躍する20数名の選手とOG、サポートスタッフなど50名規模で行なわれたこのワークショップでは、女子サッカーの価値についてのフリーディスカッション、ゲストスピーカーによる講演、自分たちがどんなことをしていきたいのかなど、活発な意見交換がなされた。ところが、ここでぶちあたったのが資金の問題だった。

「自主性を重んじるとは言っても、できれば交通費を出せる位の体制を作っていきたい。でもこの時は、結構交通費とかの経費がかさんで......(苦笑)。スポンサーを探さないといけない!と思って、資料を作っていろいろ回りました。でも、私たちが本当にやりたいことと、企業にとっての魅力的なプロジェクトとのギャップは絶対にある。本当に悩みましたね。団体を立ち上げても資金がなければ何もできないって思っていたんですけど、企業を回ったり、いろんな人と出会って話をしていくうちに、会場などのリソース提供を含めて、いろんなやり方があると気づきました」

 これらの活動を選手の立場で行なうのは困難を極めたが、そこで役立ったのが他でもないFIFAマスターで学んだことだった。

「まず助けられたのがステークホルダーマネジメント。スポーツ団体は、例えば協会、リーグ、クラブ、選手って、関わるステークホルダーが多い。それをいかにつなげていくか。選手団体とは言え、クラブ、協会、リーグともしっかりと関係を築いていかないといけない。これはFIFAマスターで学ばなかったら理解できていなかったと思う。強引に進めていたかもしれないし、そもそもやっていたかどうかもわからない(笑)」

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