ブラジルで「失ったものを取り戻す」
岡崎慎司は6年前と同じ覚悟だった

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi
  • photo by AFLO

 そういう意味では、この4年間で失ったものもある。プレミアでの経験が染みついていると思うから、次の段階としてゴール。FWとして、再び危険な選手になっていかないといけない」

 岡崎が日本代表に招集されるのは、昨年のロシア・ワールドカップ以来、実に1年ぶりのことである。しかも、コパ・アメリカに臨むのは、22歳以下のメンバーを中心にした若いチーム。ストライカーとしてリスタートを切る覚悟の岡崎にとって、若い選手たちと切磋琢磨できる今回の招集は願ってもないチャンスだったという。

「これまで代表で百何十試合に出ているけど、そういうのは関係なくて。若手と一緒に、1戦目というくらいの気持ちで勝負したいと思っていた。

 森保さんと話した時から、1トップで勝負することを目指してきたし、頭のなかの準備もしてきた。これまで自分がどんなプレーをしてきたのかを振り返りながら。自分のなかでやるべきことが固まっていたから、今回、目安となるものがほしかった」

 チリ戦で途中出場した岡崎は、ウルグアイ戦で1トップとして先発出場を果たす。この試合で2本の決定的なシュートを放ってフル出場すると、勝利が求められたエクアドルとの第3戦でもスタメンに指名された。66分に途中交代したものの、中島翔哉の先制ゴールにつながる裏への飛び出しなど、随所に"かつての岡崎らしさ"を表現した。

 その試合後、岡崎はこう言った。

「2試合も先発で出られるとは、大会前には思っていなかった」

 若手主体の今大会は、1年後に迫った東京五輪への強化の一環。しかも、レスターではリーグ戦ノーゴールに終わっていた。ロシア・ワールドカップ以来となる代表復帰は当初、若手に経験を伝えることを期待されてのものだと考えられていた。

 しかし、岡崎はピッチ内外の振る舞いで2試合のスタメン出場を掴み取った。森保一監督が称賛する。

「このチームでやっていくことを真摯に受け止め、練習中からトライする姿勢を見せてくれた。経験が豊富な選手たちが、口先だけではなくプレーで示してくれた。ピッチ外の言動にしても、若い選手たちの指針となるような姿勢を見せてくれたと思います」

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