森保Jの構造は不安定。見せ場は作っても日本ペースは作れない (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by AFLO

 育成カテゴリーであるU‐22チーム主体で臨んだ今回、監督としての使命は、できるだけ多くの選手を使うことと、勝利とを、クルマの両輪の関係で追求することだった。ところが現実は、勝利を収めることができず、出場選手に偏りも目立った。

 コパ・アメリカで一番注目していた点はそこだった。久保建英(レアル・マドリード)をはじめとする選手の動きより、森保監督の采配、選手の起用法だ。今回選出された23人は"正規"の代表ではない。暫定的な、入れ替わる可能性が高いメンバーだ。論じるべきは、代わりそうもない監督の方なのだ。

 ロシアW杯を戦った西野朗監督は、出場選手に偏りのある采配を振るった。可能性を狭めながら決勝トーナメント1回戦を戦った。ベルギー戦。西野監督はメンバー交代を2人しか行なわなかったが、それは選択肢が浮かばなかったからだ。それまでのパターンに従うと、本田圭佑と山口蛍を投入すれば、残る選択肢は岡崎となった。ところが、終盤の戦況は岡崎投入に適していなかった。日本は西野監督が3人目の交代を渋っている間に、ベルギーに逆転弾を叩き込まれることになった。

 こうした短期集中トーナメントでは、絶対に勝たなければならない戦いであっても、メンバーを代えていく必要がある。可能性を最大限まで膨らませながら次戦に向かう勇気が監督には求められる。残念ながら、今回の森保監督の采配には高評価を下すことはできない。

 サッカー的にも問題があった。それはひと言で言えば、4-2-3-1の「3」にお任せするサッカーだった。

 三好、久保、中島翔哉(アル・ドゥハイル)。頼りは彼らの即興的なプレーだった。小さくてうまくて俊敏性にも富む3人は、エクアドルに対しても十分魅力的なプレーを見せた。しかし、チームプレーのなかに組み込まれていたわけではない。出たとこ勝負の感覚的なプレーは、次に何が起こるかわからないので、確かに見ていて楽しい。実際、幾度となくワクワクさせられたが、その割に、試合は日本ペースで進まなかった。

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