W杯で苦しむなでしこジャパン。カギを握るのは負傷離脱組の復帰 (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 しかし、攻撃へ転じた際のサポートが間に合わない。一手の遅れをダイレクトパスや、コンビネーションで埋めようと試みたが、これを阻んでいたのがイングランドの守備力、球際に強さだ。コンタクトプレーが攻守ともに芯を捉えていて、日本選手は簡単に体のバランスがブレてしまう。

 そして、イングランドは奪ったあとの狙いも実に明快だった。イングランドの得点シーンで、イングランドの選手たちは日本のプレスにかかって、体勢を崩しても最後はボールを的確に押し出し、日本のDF裏のスペースにパスを通していた。ゴールまでの道筋が共有されているからこそできるプレーだった。

 サイド攻撃封じに人数をかけた日本だったが、それは、当然中央からの攻撃にさらされるリスクが生じる。自陣中央の深い位置でのイージーなミスはトップクラスのチームとの対戦では命取りとなる。また、守備にパワーをかけすぎては攻撃に出られず、前がかりになれば裏を狙われる。誰がピッチに立とうと、その駆け引きが柔軟にできてバランスをとれるのが成熟したチームだろう。イングランドにはその柔軟性があり、残念ながら日本にはなかった。

 イングランドは、初戦から第2戦にかけて先発メンバーを4人変更していた。対戦相手が格下のアルゼンチンだったこともあるが、日本戦も初戦とは4人の異なる面々を先発で起用した。それだけメンバーが変わっても強固なチームワークを築くことができているのは、成熟したチームだからこそ。

 高倉麻子監督が目指すのも、まさにそのスタイルだ。高倉監督もイングランド戦で「チームに幅を持たせたかった」とボランチに中島依美(INAC神戸)を起用した。ここに、指揮官の苦悩が透けて見える。W杯前からケガ人が多く、中島をボランチに配置せざるを得ない状況だったとも言える。大会に入ってから復帰の兆しが見えているとはいえ、籾木結花(日テレ・ベレーザ)や宇津木瑠美(シアトルレインFC)といった新たなケガ人が出ていることも誤算だ。次の試合、カギを握るのは阪口夢穂(日テレ・ベレーザ)のほか、負傷離脱している選手たちが快復して出場できるかどうかだろう。

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