ブラジル人記者が見た日本戦。「光るところがあったからこそ許せない」 (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳translation by Tonegawa Akiko

 だからこそ、上田の3度のミスに怒りを感じたのだ。若いチームにとって、ゴールのチャンスは決して逃してはならないものだ。また、日本が調子を出してきたときに、それを有効に使う動きを見せなかった日本ベンチにも納得がいかなかった。

 もし日本に「Ingenuidade」があったなら、日本は7度だってチリのゴールネットを揺らすことができたかもしれない。日本が4-0と大敗したのは日本のパーソナリティーが弱かったからだ。チリが4-0で勝ったのではなく、日本が4-0で負けたのだ。

 日本には多くの決定機があった。もっといい流れに持っていけたはずだ。この若いチームで日本はチリを脅かしたのだ。もし、もう少し準備していたなら、チャンスをみすみすドブに捨ててはいなかったろう。そして何より、他の11の参加国のように、もしここに日本のベストメンバーがいたならば......と残念に思ってしまうのだ。

 スタンドのほとんどのブラジル人は日本を応援していた。チリへのライバル心もあるが、なにより日本のサッカーに親しみを感じているからだ。スタジアムでは「信じているぞ」「まだいけるぞ、ニッポン!」の声援が最後まで聞こえた。

 森保一監督は日本やアジアのサッカーをよくわかっているのかもしれないが、世界のサッカーはわかっていないと感じた。W杯も開催したような巨大なスタジアムで、世界のトップレベルの選手たちが国の威信をかけて戦う大会は、普通の試合とはまるで空気が違う。それは時に、重圧で若い選手を萎縮させ、潰してしまう危険性さえある。もし日本が久保を、新世代を担う"金の卵"と思っているなら、こんな形で世界の舞台にデビューさせるべきではなかったのではないだろうか。

 南米の新聞の多くは、試合後に日本のサポーターが、今回はチリやブラジルのサポーターと一緒になってスタジアムの清掃をしたという「美談」を載せていた。しかしサポーターのごみ拾いが日本に関する唯一のポジティブな報道では、あまりにも悲しすぎるではないか。



2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る