チリに大敗した日本。その「差」はパスワークの質の違いにあった (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by AFP/AFLO

 つなげなかったのだと思う。チリのパスワークと比べれば、違いは一目瞭然となった。

 チリはサイドを有効に使っていた。パスワークとサイド攻撃がリンクしていた。横幅を有効に使った大きな展開ができていた。

 具体的にはそのパスワークの輪の中にイスラ(右)、ジャン・ボーセジュール(左)の両SBが絡んでいた。その前方で構える両ウイング、ホセ・ペドロ・フエンサリダ(右)、アレクシス・サンチェス(左)とも連係が取れていた。

 両ウイングと両SBのコンビネーション。日本の遅攻には含まれていない魅力である。この日、SBとして先発を飾った原輝綺(右/サガン鳥栖)と杉岡大暉(左/湘南ベルマーレ)は、両ウイングと絡むことも、パスワークの輪の中に円滑に加わることもできなかった。

「サッカーはサイドバックが活躍した方が勝つ」という格言があるが、このチリ対日本は、まさにそれを地でいくような一戦だった。

 これは森保式サッカーの弱点だと思う。この両SBの動きは、両サイド各1人で構えるウイングバック(WB)的なのだ。周囲と絡まず、単体で直進する。コパ・アメリカに出場していない酒井宏樹(右/マルセイユ)、長友佑都(左/ガラタサライ)がスタメン飾った場合も似たことが言える。その前方で構える堂安律(右/フローニンゲン)、中島(左)と絡む機会は、西野ジャパンの時より減少した。遅攻時のパス回しに、多彩さが失われている。

 杉岡に至ってはSBと言うより完全なWBだ。そもそも所属の湘南は森保式に近い3バックで戦うチームで、WBというポジションはあってもSBはない。

 こちらはてっきり森保一監督がこの大会に3-4-2-1で臨むのかと思った。それはSB的な選手が人数分、選出されていなかったからでもある。結局、森保監督が採用した布陣は4-2-3-1だったが、それは内容的には3-4-2-1に近いものだった。

 森保監督は4-2-3-1と3-4-2-1を使い分ける方向で動き出しているが、サイドを有効に使おうとしない限り、チリのようなパスワークは生まれない。出たとこ勝負の、展開力に乏しいサッカーに陥る。

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