久保建英の武器を福田正博が分析。「スター誕生。新時代が始まる」 (2ページ目)

  • 津金壱郎●構成 text by Tsugane Ichiro
  • photo by Getty Images

 このシーンに限らず、久保は常にピッチ上の多くの情報を持っている。だから、相手選手とぶつかってスタックするプレーがないし、見ている側にもストレスを感じさせない。つまり、「そこはパスだろ!」「ボールを持ちすぎだ!」と不満に思うシーンがない。フィジカル面でまだまだ成長途上なので、相手との接触によってケガをするリスクもあるが、久保は試合中に収集している情報量が多く、スキルも高いため、そうした状況を回避できるはずだ。それも彼の才能と言える。

 判断の正確なプレーをサッカー界では「賢いプレー」とシンプルに表現してしまうが、実はこれが最も難しいことでもある。久保はスピードやパワー、テクニックに頼るだけではなく、たとえば相手がプレスをかけてきたらワンタッチでパスをする、あるいはフェイントでかわしたりと、状況に応じて相手の裏をかくプレーができる。それは、一段上の判断力を持っているからだ。

 だからこそ、途中出場だったにもかかわらず、久保にあれほど多くボールが集まってきた。代表のチームメイトは、久保やスタンドのファンの期待に気を遣ったわけではない。久保はボールを持っていないときでも、味方の選手がパスを出しやすい場所を見つけて移動し、体の向きをつくる。そして、味方が顔を上げた瞬間に動き出す。こうした動きがタイミングよくできるから、味方は久保にパスを出しやすいのだ。

 久保はピッチ外から見ていても違いがわかるほどの高い能力を示してくれたが、ピッチで一緒にプレーした選手たちは彼の力をもっと実感したはずだ。

 久保はワントップに大迫勇也、右に堂安律、左に中島翔哉のいる状況でトップ下をつとめたが、堂安には明らかに気負いが見て取れた。堂安にしてみれば、これまで日本代表では自分が一番年下で注目されてきたが、18歳の久保が代表入りしたことで耳目は久保に集まり、しかも、同じ左利きで右サイドでもプレーできる久保をライバルとして意識した部分は大きいだろう。

 中島翔哉にしても、いつもどおりとは行かなかったはずだ。中島はエルサルバドル戦で久保と同じタイミングでピッチに送り出されたが、より大きな歓声は久保に向けられていた。そうした状況にあって、普段どおりのプレーとはいかなかったように映った。

 一方、大迫勇也としては、自分の持ち味を生かしてくれる頼もしい味方が増えたと感じているのではないだろうか。大迫はポストプレーでボールをキープし、味方に時間とスペースを与える間に動き直してゴール前に入り込んでシュートを狙うタイプだ。久保はラストパスを出して味方を生かすこともできるため、大迫はプレーしやすいはずだ。

 久保は4−2−3−1のトップ下でも、右サイドでもプレーできるし、3−4−2−1でも2シャドーとして出場可能だ。狭い局面でボールを受ける能力が抜群に高く、クイックネスにゴールへ向かう姿勢も強い。なによりボールを受けるためのポジション取りを、状況に応じて変えられることがすばらしい。

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