2019.06.17

トルシエが怒って教えたフラット3。
中田浩二はスプーンの動きを反復

  • 佐藤 俊●取材・構成 text by Sato Shun
  • 高橋 学●撮影 photo by Takahashi Manabu

 ベスト16(決勝トーナメント1回戦)の対戦相手はポルトガルだった。

 ポルトガルはこの大会ではブラジル、アルゼンチン、スペインと並ぶ強豪で、対戦が決まったとき、日本は苦戦必至と言われた。それでもこの試合、日本は苦戦しながらも勝利をするのだが、中田は、このポルトガル戦が決勝に勝ち進むうえでのターニングポイントになったという。

「ポルトガルは日本をなめていましたね。それでかなりメンバーを落としてきてくれたので、つけ入るスキがあったし、逆に僕らは自信を持ってやれました。でも、ポルトガルは点を入れられるといきなり選手を2人代えて本気になったし、その後GKが負傷退場して10人になっても、勢いがすごかった。PK戦までもつれてしまって苦しんだけど、勝てたことでチームにグっと勢いがついた。ポルトガル戦の勝利は間違いなく大きかったです」

 ポルトガル戦に勝って得たのは、準々決勝を戦えるチャンスだけではなかった。中田は、チームがよりひとつになったのを感じたという。

「ポルトガル戦までは、試合に出て勝つことを目標にしたり、優勝を狙っていたり、みんなの考えがちょっとバラバラだったんです。でも、ポルトガル戦に勝ったことでギュっとまとまって、みんなでひとつの目標を見るようになった。みんな、語らずとも同じ画を描けた感じになって、視界が一気に開けたという感覚がありましたね」

 中田は、それ以降、そういう感覚を味わったことがなかったという。

「同じような経験は……うーん、なかなかないですね。ただ、04年アジアカップで優勝したときは、苦しんだ分、チームがひとつにまとまった。雰囲気的には似てるかなぁと思いますけど、ここまでの一体感はなかったと思います」

 準々決勝のメキシコ戦は攻守ががっちりと噛み合い、この大会のベストゲームと言える完勝(2−0)だった。過去破れなかったベスト8の壁を乗り越え、チームは完全に勢いに乗った。つづく準決勝のウルグアイ戦も「負ける気がしなかった」と中田は思ったという。

「『上を目指そう』ってチームがひとつになっていたし、『歴史を変えよう』って、みんながその気になっていました。そういうムード作りをしてくれたのは、サブ組です。みんなが同じ方向を向いてやれるように、彼らがサポートしてくれたんです」

 ピッチ外で戦った選手たちの献身的な姿勢に、中田は胸を打たれたという。

(つづく)

中田浩二
なかた・こうじ/1979年7月9日生まれ、滋賀県出身。2014年シーズン限りで現役を引退し、2015年より鹿島アントラーズのクラブ・リレーションズ・オフィサー(C.R.O)に就任。帝京高→鹿島アントラーズ→マルセイユ(フランス)→バーゼル(スイス)→鹿島アントラーズ

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