「なでしこらしさ」はどこへ。いま必要なのはスムーズな切り替えだ (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 もちろん、一瞬一瞬に穴を見つけて、いかに攻め切るかがチーム全体でイメージできていなかったという問題が大前提にある。

 停滞しそうな雰囲気が芽生えたのは前半15分ごろ。アルゼンチンの守備陣は、日本の最終ラインや下がり気味の杉田妃和(ひな/INAC神戸)、三浦がボールを持ったとき以外は、フリーでのパスはほぼ出させていない。確実にボールホルダーの足元へ、すべてにプレスがかかっていた。

 アルゼンチン守備陣の足がよく伸びてきていたことで、長谷川唯(日テレ・ベレーザ)や菅澤、横山久美(AC長野パルセイロレディース)らは、いつものタイミングで仕掛けても相手の守備の網に引っかかっていた。引っかかれば、すぐに少なくとも2人は寄せてくるため、あっという間に囲まれてしまう。日本はペナルティエリア付近での縦パスを封じられてしまっていた。

 守備ブロックを崩すのが困難な展開に陥ったもうひとつ原因は、ファーストタッチの悪さだろう。それは、出し手に迫るアルゼンチンのプレスの影響があることは明らかだが、精度を上げるためにマークをもっとうまく剥がす必要があった。

 1秒でも早く、ゆとりを持って正確にボールを出すことができれば、必ず前線の足元にピタリとおさまるはずだった。また、受け手のコントロールにも焦りが見えていた。いつもなら収まるタイミングでも、この日はボールひとつ分パスがズレれてしまい、ブロックされてしまった。25分の菅澤のトラップや、その流れからフィニッシュに至った三浦のボールの置き位置にもそれが現れていた。

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