「森保式3バック」とトリニダード・トバゴ戦無得点の重大な関係 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 ちなみに4バックも同様だ。したがって「3バック」と「4バック」という表面的な言い回しだけで、本来、何かを語ることはできない。

 では、森保式3バックはどうなのか。少なくとも広島時代のそれは守備的だった。3-4-2-1で、相手に攻め込まれると5-2-2-1に変化した。U-22の横内式3バックも同様だ。率直に言えば守備的だ。

 トリニダード・トバゴ戦の3バックはどうだったのか。従来の4-2-3-1の"攻撃的指数"を70とすれば50。感覚的には、人の配置が全体として後方に2割ほど下がった印象だ。

 森保監督は試合後の会見で、その3バックを3-4-「2-1」ではなく3-4-「3」と称した。「2-1」と「3」。この違いは大きい。

「2-1」は、俗に言う「2シャドーとCF」の関係だ。一方の「3」は「両ウイングとCF」。問われているのは、CF以外の2人のポジショニングなのだ。トリニダード・トバゴ戦では中島翔哉(左/アル・ドゥハイル)と堂安律(右/フローニンゲン)。終盤は南野拓実(左/ザルツブルク)と伊東純也(右/ゲンク)がそのポジションを務めたが、シャドー的なのか(閉じるか)、ウイング的なのか(開くか)で、その中身は大きく変わる。

 閉じれば、その下で構える両ウイングバックの長友佑都(左/ガラタサライ)と酒井宏樹(右/マルセイユ)は、両サイドで各1人の状態になるが、開けば両サイドは各2人になる。一方のトリニダード・トバゴは4-3-3だったので、両サイドには各2人ずつ(両SBと両ウイング)いた。

 結論を言えば、森保ジャパンの3バックは3-4-2-1と3-4-3の中間だった。サイドアタッカーの数は、言うなれば1.5人。両サイドでやや数的不利に陥りながらも、個人の能力でそのハンディをカバーした格好だ。しかし、たとえば酒井と堂安(右)で、あるいは長友と中島(左)でコンビネーションプレーを発揮することはなかった。

 相手が強くなれば、その傾向はさらに増すはずだ。長友、酒井のポジションもさらに下がる。相手は両サイドを突いて侵入しようとする。すると5バックになる。後ろに下がって守りを固める守備的サッカーを強いられる。

 高い位置で守る(攻撃的サッカー)か、後ろに下がって守る(守備的サッカー)か。繰り返すが「原理原則は同じ」ではないのだ。正反対なのである。

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