久保建英とメッシ。対戦相手にしかわからない「スピード」の正体 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Yamazoe Toshio

 特筆すべきは、後半途中に見せたプレーだろう。必死のマークを試みる相手ディフェンダーをくるりとターンでかわす。追いすがられたものの、今度は右足で深い切り返しを見せ、ディフェンダーを置き去りにし、転ばせた。狙い澄ました左足のクロスを、味方がゴールに飛ばすことはできなかったが、まさに「久保劇場」だった。

 相手の裏を取れるだけに、体感するスピードは倍加するのだ。

「自分とはサイドは違いましたが、単純に速い選手だな、と感じました」

 柏レイソル、横浜F・マリノス、そして現在はサガン鳥栖と、J1で300試合以上の出場経験があるディフェンダー・小林祐三は、今シーズン、ルヴァンカップで対戦した際の久保の印象を語っている。

「技術があるし、判断もよく、だからプレースピードが速いんです。身体のブレもなくなった。昨シーズンは、マリノスの選手たちに聞いても『うーん』という感じだったのが、今シーズンは、『こういうことをしようと思っていたんだ』というプレーにつながっていますね。若いから成長するというのはあるんでしょうけど、誰でもそうなるわけではない。自分は、"久保だからこその成長速度"という気がします」

 久保のスピードは、見た目以上なのだろう。

「(対戦して)思ったよりも、断然、速い」

 Jリーガーたちは一様に、対戦した感想を洩らしている。その速さを、数値化するのは難しい。いいポジションを取って準備で上回り、そして相手の裏を取れたら、単純な走力の差など、容易に逆転するのだ。

 なにより久保の場合、トップスピードに乗った状態で、卓越したスキルを出すことができる。相手の速さが増すほど、それに合わせて進化。プレースピードの上昇を楽しんでいるようにさえ映る。

「個人的にいい感じで(Jリーグの)中断に入れます」

 久保は平然と言うが、「いい感じ」どころではない。前例のない飛躍と言える。

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