2019.06.04

久保建英とメッシ。対戦相手にしか
わからない「スピード」の正体

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Yamazoe Toshio

「私は何十人、何百人ものアタッカーたちと対峙してきた。でも、(リオネル・)メッシは異質だった。悪い体勢に追い込んだと思った瞬間、GKが一番取りにくい場所に蹴れる。こちらが優位に立ったところで、そうではないと思い知らせる、その瞬間を楽しんでいるようだった」

 リーガ・エスパニョーラで約20年、ゴールを守ってきたスペイン人GKゴルカ・イライソス(ジローナ)はそう語っていた。実際に対峙した選手は、そのスピード感に度肝を抜かれる。

「メッシがボールを持って迫ってくると、猛獣かと錯覚した。人の手ではどうにもならない速さ、力強さを感じる。襲われるのに似た怖さだ」

 オサスナで20シーズン近くプレーしたMFフランシスコ・プニャルは、そう証言していた。

 猛スピードのなかでも技術を十全に出し、相手がそれを封じようとすると、さらに裏を取ることができる。肌で感じる速度感は尋常ではない。

<時空を操られている>

 対峙した守備者は、第三者が見ている以上に、信じられない動きを目の当たりにするのだ。日本代表に初招集されたFW久保建英(FC東京)は、その領域に近づけるだろうか。

日本代表に初めて選出された久保建英(FC東京)「久保という着ぐるみを被った別人かと疑うほどに、昨シーズンから大きく変わった」

 FC東京の関係者はそう言う。

 それほど、久保は凄まじい成長を遂げた。16歳でJ3のピッチに立ち、17歳でJ1のピッチにも立った。当初は大人の洗礼を受けたが、たった半年で試練を克服。今シーズンは開幕から中心選手としてプレーし、チームを首位に押し上げ、日本代表にも選ばれている。それは進化という表現に近い。ユースの選手特有の脆弱さは一切、消えた。

 ディフェンダーに与えるスピード感は、際立っている。

 Jリーグ第14節、大分トリニータ戦は、17歳で最後の試合になったが、3得点すべてに絡む活躍だった。技術、戦術、体力、そしてメンタルで傑出。年上の選手たちを、軽々と手玉に取っている。