なでしこジャパンのボランチ問題。
最適解は見つからず課題は山積みだ

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 なでしこジャパンは、7日開幕のFIFA女子ワールドカップフランス大会前、最後となる国際試合に臨んだ。最終メンバーがそろって初めての試合の相手は、2017年のアルガルベカップで負けているスペイン(●1-2)。当時のなでしこジャパンはチーム戦略が明確になっていなかったが、今回は本大会直前。手応えと自信を得たいところだったけれども、「スイッチの入れどころがなく、ぼんやりとした試合になってしまった」と高倉麻子監督の表情も厳しい1-1の痛み分けに終わった。

86分に、粘りの1点を決めた菅澤優衣香86分に、粘りの1点を決めた菅澤優衣香 確かにスペインのプレスは速く、奪ったあとのつなぎも明確で意思統一がされていた。相手の動き出しから少しでも遅れれば、そこでのボール奪取は不可能になる。日本に不可欠なのは、相手よりも瞬間的に早い判断力だ。その力が出せずにいたのが中盤の選手たちだったように感じた。特に相手はアンカーを置いてくる日本が最も苦手とする布陣なうえに、この日のボランチは、初めてペアを組む市瀬菜々(ベガルタ仙台L)と杉田妃和(ひな/INAC神戸レオネッサ)だった。 

「前からプレスをかける」というのが、この日のチームの入り方として共有されていた。それでもハマらず、前半は日本を上回るスペインのプレスに、中盤の選手は後手に回ってしまった。

 スペイン攻撃時には、アンカーをケアしようとすればするほど、ボランチのポジションが下がり、残った相手中盤2枚は放置されてしまう。今度はそこに狙いを絞ってみると、次の瞬間にはサイドを使われてしまい、何が正解かを懸命に探り続けていた。

 ただ、目線を最終ラインに向けてみると、それほど焦りはない様子だった。相手に合わせて左右サイドのパスコースの切り方を"中切り"、"外切り"と使い分け、90分間を通して比較的安定した守備を見せていた。1失点は入ってきたクロスを競ろうとした市瀬のハンドを取られてPKという事故による失点だ。問題はPKを取られたことではなく、その前の展開であるクロスを上げさせないポジション、サイドに散らせないコース切りにある。そこに至るまでのズレがツケとなってPKにつながった。

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