U-20が払った授業料を取り戻す。完勝劇を演出した2つのキープレー

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐藤博之●撮影 photo by Sato Hiroyuki

 年代別の大会とはいえ、世界大会である。日本がこれほどの完全勝利を収めることは、そうそうあるものではない。

 U-20ワールドカップのグループリーグ第2戦で、日本はメキシコに3-0と勝利した。

 攻めては、先制、中押し、ダメ押しと3つのゴールを奪い、守っては、メキシコの武器である高速ドリブルに粘り強く対応し続け、無失点。文句なしの完勝だった。

 U-20日本代表を率いる影山雅永監督は、グループリーグ初戦のエクアドル戦の、とりわけ何もできずに苦しんだ前半を振り返り、「払った授業料を取り返そう」と、選手たちに話したという。

 その結果、「選手たちは、いい心理状態でやってくれた」と指揮官。「(初戦の課題を修正して)このゲームに臨む時点で、相手を上回れたのではないか」と語り、勝利した選手たちを称えた。

 とはいえ、影山監督が「完璧(な試合)はない。向こうにもチャンスがあった」と話したように、ちょっとしたことをきっかけに、大きく試合の流れが変わってしまうのが勝負の怖さである。しかも、プレーしているのは、経験に乏しい20歳以下の選手たちなのだ。下手をすれば、スコアが逆になっていた可能性がなかったわけではない。

 では、なぜ日本は、これほどまでに試合の主導権を握り続け、完勝を収めることができたのか。

 試合の流れを大きく日本に引き寄せるきっかけとなった、ふたつのキープレー。それはいずれも、試合序盤にあった。

 まずは、GK若原智哉のビッグセーブだ。

 最終的には、「初戦の課題を素直に認め、この試合で勇気をもって修正するんだというものを出してくれた」(影山監督)という結果になった日本だったが、試合開始早々、いきなり決定的なピンチを迎えている。

 キックオフの笛からわずか40秒ほど、ハーフウェイライン付近でルーズボールを拾ったメキシコのFWディエゴ・ライネスが、ドリブルでピッチ中央を一気に前進。左から走り込んだFWロベルト・デラロサへとラストパスが渡り、GKと1対1の状況を作り出した。

 だが、若原は慌てず、前に出てデラロサとの距離を詰め、シュートコースを限定する好ポジションを先に確保すると、両足をしっかりと地面につけてシュートを待ち、デラロサの動きを見切って、見事にシュートを防いだ。

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