黄金世代、「播戸竜二に救われた」男がチームに溶け込めた瞬間 (2ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・構成 text by Sato Shun
  • 甲斐啓二郎●撮影 photo by Kai Keijiro

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 そんな高田の気持ちを穏やかにし、チームにうまく溶け込ませてくれたのが、宿舎で同室となった播戸竜二だった。

「バン(播戸)にはいろんな意味で救われましたね。僕は、常に試合に出たいタイプだったんですよ。僕は中学生時代、日産FCジュニアユース(現横浜F・マリノスの下部組織)に所属していたんですけど、3年間公式戦にはまったく出られなかったので、試合に出ることに飢えていたし、試合に出ることで自分の価値を見出していた。

 だから、ベンチにいるのが本当に嫌だったんです。試合に出られないなかで、(自らが)やれることを考えるとか、そんなこともしたことがなかった。でも、バンが試合に出られないなかでもやれることを示してくれた。試合のときも、バンがウジ(氏家英行)らと一緒に盛り上げてくれて、(ベンチにいても)すごく助けられたな、と思います」

 練習や試合の時はもちろん、宿舎の部屋にいた時も、播戸はネガティブなことを一切話さなかったという。また、播戸はスタメンで出場していながら、結果を出せてない同じFWの永井雄一郎のことを気遣って、高田とふたりで「思い切りいこうよ」と励まし続けたそうだ。

「普通なら、同じFWなので、結果が出ていない選手がいれば『自分を出せ』と思うんでしょうけど、あの大会ではバンとふたりで、雄一郎に声をかけていました。だから、準決勝のウルグアイ戦で(永井が)得意の切り替えしから巻いてゴールを決めた時は、本当にうれしくて、バンと抱き合って喜びました」

 そう当時を振り返って、高田は笑顔を見せた。

 大会が進むに連れて、同部屋の播戸とは親交を深めていたが、自らがまだチームに溶け込めていない感覚が高田にはあった。試合に出場するチャンスに恵まれなかったので、「チームに貢献できていない」と思っていたのだ。そんなモヤモヤした気持ちを抱えていると、グループリーグ第3戦のイングランド戦でようやく出場のチャンスが巡ってきた。

「後半30分が経過して2-0という状況だったので、時間稼ぎ要員みたいな感じで本山(雅志)に代わって出場しました。とても暑くて、他の選手たちは体力的にも厳しい状況でしたから、一番動ける自分がそのなかで『やるべきことをやろう』と走り回ったり、相手からファールをもらったり、もう必死でした。

 その時に、個人的には少しはチームの勝利に貢献できたかな、と手応えを感じられました。また、その試合後にドーピング検査の対象になったんですけど、検査が終わってバスに戻ると、みんながイジってくれたんです。そこで、(本当の意味で)みんなの仲間に入れたな、と思いましたね」

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