黄金世代・氏家英行が「小野伸二は違う世界の人間」と思ったワケ (2ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・構成 text by Sato Shun
  • 甲斐啓二郎●撮影 photo by Kai Keijiro

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 そういう場面はすぐにやってきた。

 初戦のカメルーン戦、日本は1-2と逆転負けを喫した。国際大会で初戦を落とすということは、追い詰められる状況となり、かなりの痛手だ。当然、試合に出た選手たちはショックを受けることになる。

 氏家はそこで、控え組の自分は何ができるのか、考えた。

「試合直後、(自分は)ここで、みんなと一緒に落ち込んだほうがいいのか、それとも、世界を知らない俺が『大丈夫だよ』と言って励ましてもいいものか、考えたんです。で、ふとトルシエ監督の顔を見ると、『おまえ、ちょっと盛り上げろ』って、アイコンタクトで指示してきたんです。

 それで、『まだまだイケるぞ!』って、盛り上げようと思ったんですけど、試合に出ていた選手たちはみんな、落ち込むどころか、逆に『イケるよ』って自信に満ちた表情をしていたんですよ。そこでまた、『このチーム、すげぇ~な』って思いましたね」

 氏家が驚愕したチームは、続くアメリカ戦に勝利し、イングランドにも勝って決勝トーナメントに駒を進めた。その間、チームはすでに"レギュラー組"と"控え組"とに分かれていたが、控え組は腐ることなく、レギュラー組をサポートし、チームは勢いに乗っていった。

「今だから言えるけど、当時は自分が試合に出てもどうかなって思っていた。もちろん、試合に出たら目いっぱいプレーするけど、それほど"やれる"という自信があったわけじゃなかった。

 でも、バン(播戸竜二)や加地(亮)は、試合に出たかったと思う。だから、彼らの気持ちが少し落ちたときは、『そのうち勝負を決めるのは、みんなだから。とにかくトレーニングではみんなで声を出して、試合に出ている選手に"俺がいるから"って、安心させてやろうよ』と言っていました」

 控え組は懸命にチームを支えていたが、大会が進むと盛り上げるネタも切れて、普通は落ち着いた状況になる。しかし、彼らはいつも何かを考えていた。

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