2019.04.15

黄金世代の加地亮が求めたものは、
代表入りでもW杯出場でもなかった

  • 佐藤 俊●取材・構成 text by Sato Shun
  • 説田浩之●撮影 photo by Setsuda Hiroyuki

「最初は『えッ代表?』って感じやったね。正直、なんで俺がW杯メンバーに選ばれたのかなって思っていたし、俺が代表に入るのはおかしいって、ずっと思っていた。

 だから、ドイツにもホンマは行きたくなかった。『W杯に出たい』とも思わへんかった。カズさんみたいなスター選手になりたいと思って、カズさんのポスターを自分の部屋に貼っていたけど、夢は日本代表になることでもなく、W杯に出ることでもなかった」

 では、加地は何を求めていたのだろうか。

「興味があるのは、自分の目標だけやった。毎年、自分の目標を立てて、今日の練習、今日の試合で何がやれて、何ができなかったのかを明確にし、身近な目標をクリアしていく。それが一番大事やったし、人間形成に重きを置いていた。

 デカイ目標とか、叶うかどうかわからない目標を持ってやっていてもしゃ~ない。だいたい一日を充実して過ごせんヤツが、大きな目標を達成できるわけがない。自分は着実に成長していくタイプやった」

 加地にとって「うまくなりたい」ということは、必ずしも"代表でプレーする"こととイコールではなかった。

 だが、そんな加地にも代表でプレーして、一度だけ「やれた」手応えを感じ、大きな収穫を得た試合があったという。2003年10月、日本代表のデビュー戦となったチュニジア戦である。

「この試合は1-0で勝ったんやけど、結構納得のいくプレーができた。周囲の選手との組み合わせとか、自分の役割をしっかりと果たせた。日本代表として戦うなかで、今の自分が他の国と戦ったときにどうなるんかっていう、その基準になった」

 それでも、自らの目標のために練習をこなし、プレーをしていた加地には、代表での活動を次第に負担に感じるようになった。そして、いろいろと考えた結果、加地は2008年5月に日本代表引退を表明した。