2019.04.09

なぜ黄金世代のサッカーは
「一度味わうと、ほんまにヤバイ」のか?

  • 佐藤 俊●取材・構成 text by Sato Shun
  • 説田浩之●撮影 photo by Setsuda Hiroyuki

「もう1回、『ワールドユースの頃のサッカーをやりたい』と思ってしまったんですよ。あれは、一度味わうと、ほんまにヤバいんです。(U-17世界選手権アジア最終予選で頂点に立った)1994年(のチーム)から積み重ねてきたもんやと思うけど、すべて”阿吽(あうん)の呼吸”でサッカーをしていた。

 楽しいし、ストレスがないんですよ。ミスをしてもカバーしてくれる。前の選手が絶対に点を取ってくれると信じ切れるチームは、あのナイジェリアのチーム以外なかった。あのチームより楽しいサッカーに、僕は出会えへんかった」

 辻本の記憶には、1999年のU-20日本代表のサッカーが今も色褪せずに輝いている。ある意味、そこまで傾倒し、心に刺さるサッカーに出会えたことは、幸せなことでもある。

 実際、国際大会で結果を出して、プレーしている選手だけでなく、見ている者も楽しめるサッカーだった。ナイジェリアでも現地の多くの人々が日本チームを応援していた。

 そのチームの一員として、今なお「黄金世代」と呼ばれることについて、辻本はどう感じているのだろうか。

「いろいろなところで『黄金世代ですね』って言ってもらえて、誇らしい気持ちもあったけど、正直『ちょっと鬱陶しいな』と思うこともありました。自分は『そんなに活躍していないな』という負い目があったので……(苦笑)」

 2019年、辻本は関西社会人リーグ1部のFCティアモ枚方の監督に就任した。

 現役引退後、ヴィッセル神戸のスクールコーチをはじめ、関西社会人リーグ1部のアルテリーヴォ和歌山の監督や、ガイナーレ鳥取(J3)のコーチなどを歴任。幼稚園から社会人、プロチームまで指導してき経験を生かして、社会人チームの頂点を目指していく。

「自分とかかわる選手としっかり向き合って指導していきたい。そうして、死ぬまでサッカーに恩返ししていきたいですね。そういう思いにさせてくれたのが、ナイジェリアでのワールドユースなんですよ」

 辻本はそう言って、20年前と同じように真っ黒に日焼けた顔を綻ばせた。

(おわり)

辻本茂輝
つじもと・しげき/1979年6月23日生まれ。大阪府出身。2019年、FCティアモ枚方(関西社会人1部)の監督に就任。近大付高→横浜フリューゲルス→京都パープルサンガ→徳島ヴォルティス→佐川印刷SC(JFL)→FC大阪(大阪府社会人1部)

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