結果よりも内容重視。森保Jがボリビア戦で手にした収穫は? (4ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Fujita Masato

 ただし、この問題が香川の責任かと言えば、そうではない。仮に香川がトップ下の位置にとどまったとしても、攻撃が活性化する気配がなかったのは事実で、香川としてはサイドチェンジなどによる打開策を模索したにすぎない。それを事前にチームで共有できていれば、むしろ香川のプレーは全体をプラスに転じさせる可能性さえある。

 もっとも、控えチームで出場した香川にとっては、レギュラー奪取に向けてアピールしなければならない焦りもあったはずで、それが下がってボールをもらうプレーに走らせた可能性もある。実績のある選手をあえて控えチームで起用する意味がどこにあるのか、指揮官はあらためて考えてみてもいいのではないだろうか。

 そういう意味では、「ビジョンの共有なきポゼッション」によって停滞した日本の攻撃の元凶は、選手の自主性をベースにした森保監督のサッカーそのものの問題点に行き当たる。核になる戦術、プレーモデルが存在すれば、スタメンを総入れ替えしてもここまで「アドリブ性の高いサッカー」にはならなかったと思われる。

 結局、「勝ち切ることを願って交代した(森保監督)」ことが奏功し、76分の中島翔哉(アル・ドゥハイル)の決勝ゴールで勝利することはできた。森保監督のベンチワークも一定の評価を得たと言っていい。ただ、「戦力の底上げ」という点では評価するわけにはいかない。その采配によって、再びレギュラーと控えの明暗をくっきり分けてしまったからだ。

 そして、アジアカップで見えた課題についても、解決に向けた明るい材料は見当たらない。ボリビアが対策を練ってこなかったことで「研究されたときの打開策」についてはチェックの対象外だが、「大迫不在時の代役と戦術」については、2チームに分けて戦ったことで明確な手応えは得られず。また、4-2-3-1以外のオプションも試されることはなかった。

 次の日本代表戦は、コパ・アメリカ前に予定される国内での2試合だ。課題を持ち越しにしたまま臨む次の試合で、森保監督はどのようなメンバー編成を行ない、どのような狙いを持って戦うのか。ヨーロッパ組の多くを招集できないコパ・アメリカの位置付けも曖昧なまま、その意味合いが難しい親善試合を迎えることになりそうだ。

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