乾貴士が見せた「気遣い」。的確なアドバイスで若手を生かす (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 岸本勉●撮影 photo by Kishimoto Tsutomu

「俺が決めていれば、もっと楽な試合になりましたし、そこは反省点です」

 乾は悔しさを露にしたが、すぐに言葉をつないだ。

「前の3人だったり、(柴崎)岳(ヘタフェ)が入ってすごく流れが変わったし、ああやって決める力が(中島)翔哉(アル・ドゥハイル)にはある。そういうところはすごいなって思いますし、いい選手だなって思いながらベンチから見ていました」

 自身は決めきれず、代わって入った選手が結果を残す。これ以上、悔しい状況はないだろう。しかし、乾は決して卑屈にならず、ポジション争いのライバルを称え、チームの勝利を喜んだ。

「アピールできなかったら、明日が最後になる可能性もある」

 試合前日、乾はそう語っている。しかし、悲壮感はない。

「プレッシャーとかはないですよ。自分のなかでそういう気持ちは常にあるし、別にそれは今思ったことではないので。1年おきに呼ばれたりとか、常に呼ばれている選手ではないので、それは常に思ってやっています」

 2009年に代表初キャップを刻んでから、すでに10年。その間、代表に呼ばれない時期も少なくなく、招集されても途中出場がほとんどで、ピッチに立てない試合もあった。それでもクサることなく研鑽を積み、昨夏にロシアの地で最高の輝きを放った。

 しかし、森保ジャパンにはしばらく招集されず、アジアカップでは再びサブ組に甘んじ、今も主軸にはなり切れていない。そのすべての経験が、今の乾を形作る。だからこそ、自身の立場を理解し、やるべきことに取り組んでいるのだろう。

 紆余曲折を経て、たくましさを増したスキルフルなアタッカーは、今後も日本代表に欠かせない存在であり続けるはずだ。

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