2019.03.28

乾貴士が見せた「気遣い」。
的確なアドバイスで若手を生かす

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 岸本勉●撮影 photo by Kishimoto Tsutomu

 立ち上がりから、乾貴士(アラベス)は苛立っているように見えた。

 左サイドでフリーになっても、ボールが出てこない状況に、天を仰いで不満を露(あらわ)にする。森保体制下でサブに甘んじている状況に、焦りがあったのかもしれない。自身の力を示し、生き残りのためにアピールしたい気持ちがあったのだろうか。珍しく基本プレーのミスが目立ち、気合いが空回りしているのではないかと感じられた。

ボリビア戦で先発した乾貴士は積極的に若手をサポートした しかし、おそらくそうではなかった。乾はこのボリビア戦に、自身のアピールよりも重視していたことがあったように見えた。それは、森保一監督が強く求める「世代融合」のミッションだ。

 乾はこの日、自身の持ち場である左サイドでスタメン出場を果たしたが、サイドに張るだけではなく、ビルドアップの場面ではインサイドに絞って、くさびを受ける動きを繰り返していた。しかし、そのタイミングでボールが入らず、「なんで出さないんだよ」とばかりに両手を広げるジャスチャーで、出し手であるCBのふたり、とりわけ同サイドの畠中槙之輔(横浜F・マリノス)に何度も要求を繰り返していた。

 その場面について、乾はこう振り返る。

「もうちょっと持ち出して、俺のところを見たり、俺につけられなかったら(安西)幸輝(鹿島アントラーズ)を見たりっていうところですね。(三浦)弦太(ガンバ大阪)にしても、ハタ(畠中)にしても、最初のうちはボールを受けて止まっているシーンが多かった。それだとなかなかボールを動かせないし、相手も楽になる。だから、もうちょっと持ち出してくれっていう話をしました」

 苛立って見えたのは、できないことへの不満からではない。「できるのに、なぜやらないんだ」という叱咤である。

 畠中は、この試合が代表初キャップだ。ビルドアップ能力に定評があるものの、緊張により普段の力を出せない可能性も考えられた。しかし、乾は要求し続けることで、畠中の日常を引き出したのだ。