影の功労者は西大伍。ボリビア戦でグチャグチャ展開に待ったをかけた (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 スタジアムに向かう電車の中で聞き耳を立てれば、「南野(拓実)は後半、香川(真司)に代わって出るんじゃない」とか「鎌田(大地)は何分持つかな」とか「(山口)蛍は後半の最後でもいいから出てほしいね」とか、この事態をファンも冷静に受け止めている様子だった。

 世界のサッカー界に漂うスタンダードに慣れたという印象だ。吉田麻也(サウサンプトン)など、アジアカップ終了後、所属チームで出番を失ってしまった選手がいる現実も輪を掛ける。激しい競争社会の中で生きる欧州組を代表に毎度招集すれば、サッカー選手として危うい立場に陥る。それが贔屓(ひいき)の引き倒しになること、代表強化に悪影響を及ぼすことを多くのファンが理解しつつある。代表チームとの向き合い方に変化が起きていることは間違いない。

 スタンド風景も、かつてとは少し異なってきた。チケットは2試合とも完売だった。しかし、青いユニフォームを着たサポーターが占める割合は確実に減っている。試合中、声を枯らして歌い続ける観衆が減る一方で、静かに見入る観衆の割合が増加。玄人っぽい人が増えているという印象だ。成熟してきたと言ってもいいだろう。無理な興行化に走る必要がなくなっているのだ。

 ボリビア戦の話をすれば、試合内容に物足りなさを感じる人が多数を占めるだろう。「せっかくチャンスをもらったんだから、もっと頑張れば」と言いたくなる気分だが、一方で、1.5軍で戦ったコロンビア戦のスタメンを総取っ替えしたのだから、うまくいかないのは当然だという気持ちも強く湧く。過去にこのメンバーで戦ったことは一度もない。言ってみれば即席チームだ。

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