昌子源、フランスでの経験を生かす。ファルカオの突破を何度も阻止 (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 準備期間が短いなか、周囲をアジアカップメンバーで固められた最終ラインで昌子が意識したのは、声を出すことだったという。

「声をずっと出すのは自分でも得意だと思っているし、それもひとつの能力だと思っています。チームメイトにどういう状況かを伝えることをすごく意識しました。声はよく届いてくれたかなと思います」

 フランスでの経験もさっそく役立った。対峙したファルカオ(モナコ所属)はフランスリーグで対戦したばかり。試合は1−2で敗れたものの、ファルカオにはゴールを割らせなかった。

「ファルカオ選手とは直近でもやっていたので、ある程度落ち着いて対応できる部分があった。彼の動き出しはやっぱり一級品なので、彼のファーストプレーのできるだけ近くに行って、潰そうっていう意識はありました」

 その言葉どおり、エリア内で立て続けにブロックに入り、ファルカオからボールを奪い取った42分のプレーは、この日の昌子のハイライトだっただろう。

 フランスで過ごす日々は、けっして順風満帆ではない。しかし、強靭なフィジカルを備えたストライカーと対峙する経験は、昌子のディフェンダーとしての能力を確実に高めている。

「個人的に抜かれるシーンもあれば、止められるシーンもある。そういう部分をこれからも追求していきたいと思う。

 フランスリーグはパワーやスピードのある選手が多いので、そういう選手と日々やっていくと、もう少しいい対応ができるようになるかもしれない。どういうふうに抑えたかっていう経験値ですね。フランスでやっていくなかで、そういう部分がどんどん上がっていくと思います」

 ロシアW杯では、メンバーを入れ替えたポーランド戦以外の3試合にフル出場。躍進を遂げた日本代表において、もっとも評価を高めた選手のひとりだった。しかしその後は、ケガの影響で日本代表から遠ざかっていた。鹿島でアジア制覇を成し遂げ、海外移籍を実現した一方で、ロシアの地でベルギーに敗れた苦い経験を忘れてはいない。

 あれから9カ月。濃厚な日々を過ごし、たくましさを増した男は、雪辱を期す3年後の舞台に向けて、ようやくリスタートを切った。

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