福田正博のアジアカップ総括。「森保Jには優勝以外の目的があった」 (3ページ目)

  • 津金壱郎●構成 text by Tsugane Ichiro photo by Fujita Masato

 また、アジアカップで見えてきた課題は、「戦術の幅」と「選手たちの自律」にあったと感じている。たとえば、カタールは育成年代から同じ監督のもとでプレーし、3バックでも4バックでも戦えるチームとしての戦術的な幅があった。しかし、日本は森保体制が発足してまだ4カ月ということもあって、そこが不足していた。

 ただし、これはチームの成熟度の差であり、日本代表も今後、戦術的な幅を手にできるはずだ。それだけに森保監督には、現在の4−2−3−1の形を極めながら、どこかのタイミングで3バックにもトライしてもらいたい。

 もうひとつの課題である「選手の自律」は、日本サッカー界が長年抱えている問題と言える。ヴァヒド・ハリルホジッチ元監督が顕著な例だが、指導者が強い言葉で指示を出すと、日本人選手は言われたことだけを実行する傾向があり、自分自身で判断することをしなくなってしまう。

 ピッチ上で実際にプレーするのは選手たちで、刻々と変わる戦況に応じて自分たちで考えて対応しなければいけない。イビチャ・オシム元監督が常々言っていた「考えて走る」ということだ。森保監督もまた、ベンチの指示待ちだけの選手は強豪国と戦えないことを十分に理解している。そのため、チームとしての方針は明示しながら、ディテールは選手たちに考えさせるようにしているのだろう。

 しかし、アジアカップ決勝のカタール戦では1失点目がオーバーヘッドシュートの「まさか」というゴールだったこともあって、守備の混乱の修正ができないまま前半だけで2失点。こうした展開のとき、ベンチからの指示を待つだけではなく、ピッチにいる選手たちが自らの判断で対応するには、まだまだ課題が残っているとも言える。

 監督の仕事というのは、「試合前までに8割が終わる」と言われている。究極は、試合が始まれば監督がほとんど何もしなくても選手たちが考えてプレーし、勝利できるチームを作ることにある。今大会での日本代表選手たちの成長と課題を、森保監督は今後につなげていくはずだ。

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