ドゥンガらブラジルの名手が、アジア杯の日本に足りないと感じたもの (3ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon  利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 日本サッカーはここ20年で目を見張るほど大きく前進した。しかし、サッカーの神髄にはいまだ到達していないように思える。巧みなテクニック、組織立った動き、戦術、こういったものは非常に大事だが、最後の最後に勝敗を決めるのはメンタルだ。Jリーグ発足当時から、私は個人的に日本サッカーを見続けてきたが、いまだに感じるのが、ジーコが何年も前に指摘した"マリーシア(狡猾さ)"の欠如だ。

 Jリーグで長くプレーしたビスマルクもその点を強く感じているようだ。

「日本の敗戦は残念だった。決勝の相手がカタールに決まった時、私は日本の5度目の優勝を確信した。たぶん決勝戦のカタールは、この国のサッカー史上、唯一無二の最高のプレーをしたのだと思う。今後日本とカタールが10回対戦しても、日本は10回勝つはずだ。日本の方がカタールよりもずっとプロらしく、戦術も駆使していたし、ボールポセッションも日本の方が上で、リズムもあり、試合を支配していた。

 しかしそれでも負けてしまったのは、他でもないメンタルによるものだ。思うに、日本にはピッチに真のリーダーが欠けていたのではないだろうか。何が何でも勝つという気持ちとマリーシアを持ち、皆を落ち着かせ、ネガティブな状況もポジティブに変えられると先頭きって皆にわからせる存在が......。

 ただ、敗戦は残念だったが、決勝の舞台にたどり着けたということは、監督や選手の顔ぶれが代わっても日本の強さは変わらないということだ」

 日本と関わりあるブラジル人のなかでも、最も偉大なレジェンドのひとり、トニーニョ・セレーゾにも話を聞いてみることにした。彼は日本と中東で監督をした経験がある。ある意味で、この決勝の話を聞くには最適の人物だろう。

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