阪口夢穂はなでしこの心臓部。ケガから復帰→W杯まで試合勘を戻せるか (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 そこで気になっていたのが、試合を見に来ていた阪口の反応だった。実に穏やかなのである。ベレーザの変化を焦燥感なく見つめているその姿に、こちらとしては不安が膨らむ一方だった。阪口は自身への過小評価が過ぎることも多々あり、『もう自分は必要ない』と思ってしまうのではないかと懸念を消しきれなかった。

「そう思うことは実際にありましたよ(笑)。こういうチームの形もあるって素直に感じていた。自分がそこに入る入らないっていうより、必要じゃないかもって。イメージが湧かなかったんです。でも永田監督といろいろ話して、やってみようという気持ちになりました」

 想像したとおりだった。けれど阪口は新しい挑戦を決断し、今こうしてなでしこジャパンのピッチに戻ってきた。

「(体の状態的には)代表に呼ばれるのは少し早いかなとは思ったんです。ここまでは体の機能を戻すリハビリをやってきました。ここからはサッカーをしながら視野とかサッカー勘というものを戻していかないといけない。叩き込んでいくしかないんですよね。それが本大会までの4カ月で足りるのかどうかっていうのはわからないんですけど......」

 有吉の場合でも復帰後、半年以上をかけてやっと戻ってきていた。阪口にそれだけの猶予はない。なでしこジャパンでもっとも多数の選手とボランチでコンビを経験した阪口。この合宿でもチームメイトの三浦をはじめ、長野風花(ちふれASエルフェン埼玉)、杉田妃和(ひな/INAC神戸レオネッサ)、松原有沙(ノジマステラ神奈川相模原)といった若い中盤の選手たちが招集されている。なでしこ最強の経験値を持つ阪口と可能性を無限に秘めた若手選手たち――。用意された椅子には限りがある。それぞれに熾烈な4カ月が待ち構えている。

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