カタール戦の勝敗は紙一重の差。だからこそ森保采配に疑問符がつく

  • 中山淳●文 text by Nakayama Atsushi 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 それに対して、日本は11番のマークの受け渡しが曖昧なまま守備を続けてしまい、そこが修正すべき点だったのは明らかだった。前半の2失点の原因、さらに言えば試合の敗因はそこにあると言っても過言ではないだろう。

 しかし、森保監督は先制を許したあとも修正の指示を送ることはなく、それを放置してしまったがために、勝敗を分けた2失点目を招いた。

 なぜ森保監督は問題を放置したのか。それは、選手の自主性を尊重するという森保監督のチーム作りのアプローチを考えてみれば、腑に落ちる。35分、ピッチサイドで森保監督と大迫勇也(ブレーメン)が会話をかわし、その直後から日本は守備時の2列目の立ち位置が修正されたが、その修正はどちらの発案だったのか。

 結局、「先に2失点して難しい展開になった」(森保監督)という前半は、日本の良さを出せないまま。森保ジャパンのバロメーターである縦パスは、柴崎岳(ヘタフェ)と塩谷が3本、吉田と冨安健洋(シント・トロイデン)は1本のみ。生命線と言える大迫へのパスコースも封じられた。

 後半は一転、後がない日本が一方的に押し込む展開が続いた。後半開始直後のカタールのシステムは5-4-1。2点リードという状況を考えれば、カタールが守備に重きを置くのも当然だ。

 後半は、今大会でもっとも森保ジャパンの特長が出た45分間だったと言える。リードした格下が守りに入ったとき、格上にチャンスが生まれるという、サッカーの試合でよく見られる展開になった。中2日のカタールが疲労し始め、受けに回っていたことも影響したが、3-0で勝ったイラン戦の開始20分間よりも日本のサッカーは機能していた。

 ダブルボランチから前線への縦パスは、不成功も含めて柴崎が5本、塩谷が7本。そのうち69分の塩谷の縦パスが、南野拓実(ザルツブルク)のゴールにつながった。また、両サイドバックから前線へのパスも前半とほぼ同じペースで打ち込まれ、サイドからのクロスも前半の7本から後半は11本に増加。相手の大迫へのマークもずれ始め、日本は大迫を起点に攻撃の形を作れるようになった。

 同点ゴールは時間の問題──。そう思うほど、日本がカタールを圧倒する時間が続いたが、その状況を一変させたのが79分のカタールの攻撃だった。防戦一方だったカタールが後半初めて作ったそのチャンスは、11番のドリブルによるカウンターから6番がフィニッシュを狙ったシーン。その直後のカタールのコーナーキックのシーンで、カタールの選手と競り合った吉田の手にボールが当たり、これがハンドの判定に。それによって得たPKをカタールが決めた時点で、日本の敗戦は決定的となった。

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