カタール戦の勝敗は紙一重の差。だからこそ森保采配に疑問符がつく

  • 中山淳●文 text by Nakayama Atsushi 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 一方のカタール率いるフェリックス・サンチェス監督は、準決勝までの6試合で3つのシステムを使い分けて勝ち抜いてきた。グループステージの1、2戦(レバノン戦、北朝鮮戦)は4-3-3、3戦目のサウジアラビア戦と準々決勝の韓国戦は5-3-2(3-5-2)、そしてラウンド16のイラク戦と準決勝のUAE戦は4-2-3-1。格下には攻撃的な4-3-3、互角の相手に対しては4-2-3-1、格上に対する時は守備に重きを置いた5-3-2というパターンでシステムを使い分けてきた。つまり、格上である日本との決勝戦では、韓国から金星を挙げた試合と同じ5-3-2を採用する。そう予想するのが妥当だった。

 果たして、5-3-2のフォーメーションのカタールに対し、森保ジャパンは序盤から苦戦を強いられた。とりわけ敗戦後にクローズアップされたのが、4-2-3-1と5-3-2の噛み合わせの問題だ。それにより、日本代表の前からのディフェンスが機能せず、前半は相手に主導権を握られて2失点を喫した。

 試合後の会見でその点を問われた森保一監督は、「相手が5バック、3バックであることを想定しながら準備をしたが、選手が思い切ってプレーできる状態にまで準備できなかったことは自分の責任」とコメントしている。

 ここで思い出してほしいのは、森保監督がサンフレッチェ広島時代に3バック(5バック)で数々のタイトルを獲得した指導者ということだ。3バックか5バックを採用して4-2-3-1のチームから勝利を収めた経験も多いわけで、5バックの弱点や、対峙したときの問題の解決策を知らないわけがない。そう考えると、システムの噛み合わせが悪かったという現象だけを敗因とすることには無理がある。

 では、なぜ3バックや5バックの弱点を熟知しているはずの森保監督は、相手が3バックでくることを想定しながら、その対策をチームに落とし込めなかったのか。そこを敗因としてクローズアップするなら、森保監督のチーム作りのアプローチそのものを追求しなければ、前半の劣勢を論理的に説明することは困難だ。

 今大会、日本が5バックの相手と戦った試合は初戦のトルクメニスタン戦と準々決勝のベトナム戦、そして決勝のカタール戦だった。日本の中央への縦パスを封じる狙いは3チームとも同じだったが、ボール奪取後のプレーはカタールだけ違っていた。1トップに当てるのではなく、かなり高い確率で11番(アクラム・ハッサン・アフィフ)を経由し、彼を起点にゴールを目指していたのだ。11番が準決勝までの6試合で記録したアシストは8。19番が8ゴールをマークしていたことと合わせて、カタールの攻撃の最大の特徴となっていた。

 この11番が、日本のセンターバックとダブルボランチの間のスペース、両サイドバックの背後に空いたスペース、ボランチと2列目の間に空いたスペースと、前後左右にポジションを変えて何度もチャンスを作り出した。

 決勝前半の11番のポジションは、5-3-2の2トップの一角。しかし立ち位置は、1トップ気味の19番よりも少し低いポジションで、5-3-1-1のトップ下だったとも言える。

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