ハリル的でも西野的でもあり。
森保Jは歴史をミックスして決勝に臨む

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi
  • photo by AFLO

 おまけに1トップの19番アルモエズ・アリは今大会、絶好調で、すでに8ゴールをマークしている。「まるでチーターのようですね、彼は」と長友が評したこのエースストライカーだけでなく、左ウイングの11番アクラム・ハッサン・アフィフ、右ウイングの10番ハサン・アルハイドスと、攻撃陣にタレントを抱えている。

 とはいえ、戦術的にカオスなチームよりも、統制の取れたチームのほうが分析しやすいという利点もある。それに、個人レベルのミスもかなり散見され、個々の能力では日本に分がある。組織としてのカタールの強みをいかに封じ、ほころびを突けるかどうか。

 おそらく前半はこれまでどおり、手堅くゲームを運び、牽制しながら相手の出方を観察し、見極めることになるだろう。その45分間でどこに勝機を見出し、後半にそれを手繰り寄せるか。柴崎岳(ヘタフェ)もこんなふうに語っている。

「相手の情報は入れますけど、試合に入ってみて、対応力をもって柔軟に相手に対してプレーしたいと思います」

 一見、面白みを欠く前半に、勝利への布石が打たれているはずなのだ。見る側は、それを楽しみたい。

 カタールはUAEとの準決勝でふたりの選手を出場停止で欠いていたが、決勝はベストメンバーで臨むことが予想される。一方、日本はイラン戦で左太もも裏を痛めた遠藤航(シント・トロイデン)の欠場が濃厚だ。これまで出色のプレーを見せていただけに、遠藤の不在は痛いが、だからこそ、指揮官の言う「総合力」が問われることになる。代わりに入る塩谷のパフォーマンスと、周りの彼へのサポートに注目したい。

 準決勝でアジア最強と謳われるイランを3−0と撃破し、ともすれば、油断の生まれやすい状況にある。さらに、UAEとカタールの国交断絶により、カタール人のUAE入国は原則禁じられているため、カタールサポーターはスタジアムに入れない。おそらく決勝は、日本が白装束をまとったUAE人の後押しを受けるという、一種、異様な雰囲気になるだろう。精神的に難しいシチュエーションであるのは間違いない。

 それでも焦れずに、冷静にゲームを進められるかどうか。もし、チームがナイーブになったとき、森保一監督は立て直すことができるか。この特殊なファイナルを乗り越えて栄光を掴み取って初めて、森保ジャパンは真価を証明することになる。

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