ベトナム戦の内容ではイランに通用しない。データが示す森保Jの低調ぶり

  • 中山淳●文 text by Nakayama Atsushi 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 また、57分に先制した日本が、リスクの高いパスを控えたことも影響したと考えられる。事実、柴崎の縦パス本数は大きく減少したものの、8本のうち相手にカットされたのは2本のみで、直接チャンスを生み出すことはなかったが、パス成功率は前半よりも格段に上昇。吉田の縦パス3本も、すべて味方につながっている。

 さらに、72分に大迫がピッチに登場したことが日本のプレーに安定をもたらした。大迫の投入によってチャンスが増えたわけではなかったが、不用意にボールを失うシーンが減り、チーム全体が落ち着きを取り戻したように見えた。

 結局、先制以降、日本が作ったチャンスは66分のオフサイドになった北川のシュートと、77分の南野のシュートの2度だけだったが、相手のカウンターを受けるシーンもなく、終盤もピンチらしいピンチはなかった。

 とはいえ、ベトナム戦が低調な試合だったことに変わりはない。トルクメニスタンと同じような対策を打たれたなかで、日本が新たな解決策を見出したわけでもなく、勝った以外に次につながるものがあったかと言えば、それも見当たらなかった。

 こうなると、心配なのは準決勝のイラン戦だ。ここまでのイランの戦いぶりは、アジア最強(FIFAランキング29位)と呼ぶに相応しい内容で勝ち続けていて、とりわけここまでの5試合で失点はゼロ。日本にとっては、今大会初となる格上チームとの対戦になる。

 そこでもっとも注目されるのが、イランを率いるカルロス・ケイロス監督と、森保監督のベンチワークだ。これまで5試合は選手の自主性を軸に勝ち上がってきた森保ジャパンだが、さすがにイラン相手にそれだけでは通用しないと思われる。

 果たして、次のイラン戦で森保監督は自らの采配でチームを勝利に導くことができるのか。それとも、これまでどおり戦況を見守って選手の自主性に賭けるのか。現状では後者となる可能性は高いが、森保監督の本当の手腕を評価するうえで最高の舞台であることは間違いなさそうだ。

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