辛勝続き。なぜ日本代表はアウェーで苦戦するのか?

  • 津金壱郎●構成 text by Tsugane Ichiro
  • photo by Fujita Masato

 そして、こうしたことこそが、アウェーの地で選手のメンタルをプラス方向に維持する最適な手段でもある。アウェーとは何かといえば、普段の環境とは異なることの連続で、その総合体のこと。なにかひとつを解消したら、すべてがうまくいくという単純なものではない。だからこそ、コントロールできるものはコントロールし、できないものは受け入れて対応する。コントロールできないものをコントロールしようとするからストレスが生まれるのであり、コントロールできない要素とは戦わないのがベターだと私自身は考えている。

 もっと言えば、試合でもコントロールできないものだらけだ。暑さ、寒さの気候、雨や晴れの天気、風、気圧...。ピッチに立てば、グラウンドコンディション、審判の判定基準の違い、ボールの違い。ピッチの芝の長短だけではなく、芝の種類の違いでパススピードに影響が出たり、ドリブルがしにくくなることもある。

 そうした状況で、選手がまずコントロールできるのは自分自身だからこそ、個々のコンディショニングが重要になり、そのためには、よりストレスの少ない生活リズムが作れるように環境を整えることが必要になる。

 私の現役時代には、対戦相手が足裏を見せてスライディングしてくるラフプレーがあっても、"中東の笛"と言われていたように審判が笛を吹かないケースは実際にあった。当時はそれによってプレーのリズムを崩すことはあったが、現在はVARもあるし、アジア全体のレフェリングのレベルが上がってきているので、以前よりは「アウェーの洗礼」は少なくなっているように思う。

 また、現在の日本代表選手たちは海外組が増えているため、日本以外の国や地域への適応力は高まっていると言える。たとえば、接触プレーのファールの基準が、普段プレーするリーグと違ったとしても、彼らは日本から海外リーグに移籍する過程でそうしたことも経験しているため、自分を見失ったりはしない。

 海外組が増えたことで難しさが増しているのは、監督の側だ。選手たちが同じ国でプレーしていれば、それぞれのコンディションはすぐに把握できるし、バラつきがないから整えやすい。だが、世界各国のさまざまなリーグのクラブに行き、出場機会にも差があるなかで、代表チームとして集合した時に全員のコンディションが揃うようにしなければならないのだ。

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