辛勝続き。なぜ日本代表はアウェーで苦戦するのか?

  • 津金壱郎●構成 text by Tsugane Ichiro
  • photo by Fujita Masato

福田正博 フットボール原論

アジアカップで勝ち上がる日本代表について、過去、自らも選手としてアウェーでも戦ってきた福田正博氏が、自らの経験をふまえて、アウェーで戦うことの難しさについて考察した──。

 日本代表はUAEでのアジアカップで、ベスト4進出を決めた。しかし、ここまではアジア勢に苦しめられる展開が続いている。

 そこで、今回は対戦相手の本拠地や、日本以外の国や地域で戦うケースを含め、日本代表がアウェーで試合をする難しさについて考えたい。

アジアカップで辛勝続きの森保ジャパンアジアカップで辛勝続きの森保ジャパン 海外で戦う試合の難しさは、すべてにおいて『普段と違う』ことにある。よく「平常心で戦え」と言われるが、ピッチに立つ以前から平常時と異なる環境に身を置けば、平常心を保つのは容易ではなくなる。

『移動距離』、『時差』、『気候』、『食事』、『水』のほか、『宿泊施設』や『ピッチコンディション』、『レフェリーのジャッジ』に至るまで、アウェーではさまざまな要素が普段生活している場所とは異なっている。そうしたなかで、いつもどおりのいいサッカーをするには、心身ともにいかにコンディションを整えるかが大きなテーマになる。

 戦術や選手起用にばかり目が行きがちだが、それらは選手のコンディションが整っていてこそうまくいくもの。そのため、現代サッカーにおいてはコンディションが勝利の7~8割を占めると言っても過言ではない。だからこそ、コンディショニングはもっとも重視されているのだ。

 アウェーでの戦いには、W杯予選のような1試合だけの場合と、ワールドカップやアジアカップのように一定期間遠征先に滞在するケースがあるが、ここでは後者を想定して話を進めていこう。

 最初の違いは、気候と時差だ。これに適応するところからコンディショニングは始まる。今回のアジアカップのように真冬の日本や欧州から、暑い地域へ行くことの方が環境適応のハードルは高い。寒い場所から暑い場所に行くと毛穴がなかなか開かずに、汗をかくことに苦労するのだ。

 汗が出ないと、熱が体内にこもってしまい、なかなか普段どおりに体を動かすことができない。そのため、私が現役時代に日本代表を率いたハンス・オフト監督(1992年-93年)は、アウェーの地に到着した日は、すぐに体を動かすことを選手に徹底させていたし、2006年から07年まで日本代表を指揮したイビチャ・オシム監督は、夜中に遠征先に着いたときでも、宿舎に到着してすぐに選手にトレーニングをさせていたほどだ。

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