クリア回数が多すぎる。サウジ戦で明らかになった森保Jの問題点 (4ページ目)

  • 中山淳●文 text by Nakayama Atsushi 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 その時間帯で目立っていたのが、サイドからのクロスボールだ。29分にスローインから原口が、その続きのプレーで逆サイドから酒井が、さらにそれを跳ね返された後に遠藤が拾い、右に開いてパスを受けた堂安が右足でクロス。30分には長友が、32分にも武藤が左からのクロスを入れ、主にサイドからの攻撃によって相手を敵陣に押し込んでいた。

 この試合、日本が試みたサイドからのクロスは前半が9本、後半が2本。前半9本のうち、実に6本がこの時間帯に記録された。森保監督が試合後に語ったとおり、できればこの7分間のように相手陣内でプレーする時間を増やしたかったというのが本音だろう。

 その一方、戦前からサウジアラビアのポゼッションを想定し、守備を固めてロングカウンターを狙っていたという形跡は見当たらなかった。唯一それらしき形は、後半に入った60分。酒井のヘディングのクリアのあと、原口のロングフィードを受けた武藤が斜めにドリブルし、自分でシュートを放ったシーンだ。

 結局、日本がこの試合で試みたカウンターは、ショートカウンターを含めてわずかに5回。しかも60分以外のシーンはいずれもシュートに持ち込めなかった。これらの事実は、日本が意図的に引いて守り、カウンターを狙っていたわけではなかったことの証と言える。

 また、後半はさらに状態が悪化し、サウジアラビアのボール支配率は前半の69.8%を上回り、82.7%を記録するに至っている。

 その数字の裏付けとなっているのが、日本が陣地挽回のために前方もしくはタッチに蹴り出したクリア回数だ。前半の26回という数字自体、これまでの森保ジャパン、さらに言えばハリルジャパンの時代でも考えられないほど多いが、後半になるとクリア回数は35に増加。もはやボールをつなぐという意識、余裕はなかったと言っていい。

 森保ジャパンのバロメーターである前線への縦パス、とりわけ敵陣中央の味方の足元につける縦パスも、後半12分に遠藤がダイレクトで武藤に入れた1本のみ。しかしこのシーンも、前を向いた武藤が左に流れた南野に展開したものの、味方の押し上げがなかったことと、相手の守備人数が足りていたことでチャンスは潰えている。

 クリアばかりでボールを味方につなげられないから、攻撃の組み立てもできない。そんな状況で、効果的な縦パスを使った攻撃などできるはずもない。しかも自陣から大きくクリアしたボールも、ゴール前で跳ね返したあとのセカンドボールも相手に拾われるため、必然的にゴール前を固めるべくボランチ2枚が最終ラインに吸収される。

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