クリア回数が多すぎる。サウジ戦で明らかになった森保Jの問題点 (3ページ目)

  • 中山淳●文 text by Nakayama Atsushi 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 前半2分には、左サイドで原口元気(ハノーファー)、南野、武藤の3人がプレッシャーをかけ、最後は武藤がボールを奪取。すぐに武藤が囲まれてボールはタッチを割ることになったが、これも高い位置(ハーフウェイライン付近の相手陣内)でボールを奪うべく、日本が連動した守備を見せたシーンとして数えられる。

 また、7分にもルーズボールに対して酒井、遠藤航(シント・トロイデン)、堂安が敵陣深いエリアでボールホルダーを囲い込み、即時回収を狙った守備ができていた(最終的に酒井のファールで相手のFKでリスタート)。

 このような守備が続けられれば、当然ながら相手のボール支配率は下がり、日本がボールを握る展開に持ち込めたはず。しかしそれ以降、前半で日本がこの手の連動した守備を見せることはなかった。できなかった、と言うのが正しいだろう。

 そうなってしまった原因は主に2つ。

 ひとつは、日本の選手の厳しいチャージが主審にファールの判定を下されてしまい、自陣で相手に多くのFKを与えてしまったこと。もうひとつは、サウジアラビアの巧みなボール回しに翻弄され、プレスがかからないため守備ラインが下がってしまったこと。とりわけ大きく外に開いたサウジアラビアの両サイドバックが高い位置でボールを受けるシーンが増えたことで、酒井と長友佑都(ガラタサライ)が前に出られなくなってしまった。

 そういう点で、この試合のサウジアラビアは日本を圧倒するサッカーができていたと言える。サイドに起点を作れたことで、守備ラインが高い位置取りをキープして全体をコンパクトに保つ。それにより選手間の距離が近くなり、ボールを失ってもすぐにプレスをかけて即時回収できる。サウジアラビアが実践していたサッカーは、本来森保ジャパンがやりたいはずのサッカーだった。

 苦しい戦況のなか、前半20分、コーナーキックから冨安が値千金のヘディングシュートを叩き込み、日本が先制。そして、サイドの攻防がいかに重要であるかは、日本が1点をリードした後の時間帯でも証明されている。

 失点直後は再びサウジアラビアがボールを支配したものの、27分のワンプレーをきっかけに試合の流れが日本に傾いた時間帯があった。柴崎のロングフィードが右に流れた南野につながり、南野がサイドからクロスを入れたシーンだ。このクロスは誰にも合わず相手に拾われてしまったが、そこから約7分間、短い時間ながら日本は相手陣内で攻勢を仕掛けることができていた。

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