クリア回数が多すぎる。サウジ戦で明らかになった森保Jの問題点 (2ページ目)

  • 中山淳●文 text by Nakayama Atsushi 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 すでにグループ突破を決めていた3戦目のウズベキスタン戦では、控えメンバーによるBチームで戦っていたため、この試合は予定どおりターンオーバーを採用した格好だ。これまでの森保采配、そしてこの試合から一発勝負の戦いが続くことを考えると、妥当と言えば妥当。良い悪いは別として、奇策を打つことがない森保監督らしい選択と言える。

 一方のフアン・アントニオ・ピッツィ監督率いるサウジアラビアは、グループ3戦目のカタール戦から3枚を変更した。システムはこれまでどおりの4-3―3(4-1-4-1)だった。サウジアラビアは最初の2試合でグループ突破を決めていたものの、勝ち点6ポイント同士の戦いとなったカタール戦ではターンオーバーを採用せずに主力組で戦っていた。それだけに、同じ中3日で迎えたこの試合は、前の試合からスタメン10人が入れ替わった日本の方が、コンディション的に有利な状況で迎えたことになる。

 ところが、最後まで足が止まらなかったのはサウジアラビアの方だった。それがボール支配率の大きな差と深く関係しており、日本は終始ディフェンスにエネルギーを使った前線の選手たちが消耗してしまった。

 現地15時キックオフで気温が高かったことも影響したと思われるが、それにしてもターンオーバーを採用し、Aチームのメンバーをリフレッシュさせて臨んだ森保監督にとっては、運動量でサウジに上回られたことは誤算だったはず。当然、準々決勝のベトナム戦とそれ以降の戦いに、それなりの影響を与えることになるだろう。

 では、森保ジャパンはどのような狙いでこの試合に臨んだのか。ポゼッションサッカーを標榜する相手に意図的にボールを持たせ、守備からロングカウンターを狙う戦術で勝利を目指していたのか。あるいは、失点を回避すべくゴール前を固め、最悪0-0のままPK戦も想定して戦ったのか。

 もしそうであるなら、それが伺えるシーンがあったはずだ。しかし、実際に見えたいくつかのシーンは、この試合の日本の戦い方が意図したものではなかったことを証明していた。それは、試合後の「もっと攻撃を仕掛け、ボールを保持することができればよかった」という森保監督のコメントにも一致する。

 注目すべきは、キックオフ直後のシーンである。

 ボールをアンカーに下げ、さらに左センターバックから左サイドバックへとボールを回すサウジアラビアに対し、日本は武藤と南野拓実(ザルツブルク)が内から外へプレッシャーをかけると、それに呼応して堂安律(フローニンゲン)、柴崎岳(ヘタフェ)、酒井宏樹(マルセイユ)が連動。相手左サイドバックにボールが渡ったとき、南野と堂安が前後からボールホルダーにプレスをかけ、同時に、相手のアンカーに武藤が、左インサイドハーフに柴崎が、左ウイングに酒井がそれぞれ付いて相手のパスコースを消す。結果、やむなく左サイドバックは前にボールを蹴り、そのボールが堂安に当たってタッチに出たが、それは森保ジャパンが国内親善試合でも見せていた守備方法だった。

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