クリア回数が多すぎる。サウジ戦で明らかになった森保Jの問題点

  • 中山淳●文 text by Nakayama Atsushi 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 前半20分に冨安健洋(シント・トロイデン)がマークした1点を守り切り、日本がサウジアラビアに勝利を収めたアジアカップ決勝トーナメント1回戦は、戦前の予想を覆す試合内容だった。

 とりわけこの試合でクローズアップされたのが、サウジアラビアの76.3%という驚異的なボール支配率だ。ボール支配率が試合の公式記録に記載されるようになって以来、日本がアジアのチームを相手にわずか23.7%しか記録できなかったケースは過去を遡っても例がない。その解釈を巡ってさまざまな議論が巻き起こったのも当然だろう。

サウジ戦で試合を支配された森保J。ベトナム戦で改善はされるかサウジ戦で試合を支配された森保J。ベトナム戦で改善はされるか もっとも、かつてのバルセロナやスペイン代表に象徴されたポゼッションサッカーが鳴りを潜めつつある現在は、ボール支配率が必ずしも勝敗に影響を与えるものではないことは周知のとおり。

 ロシアW杯で優勝を果たしたフランスのように、高速カウンターから生まれたゴールが勝利を決定づけることが多いのが、現代サッカーのトレンドでもある。

 しかし、その堅守速攻のスタイルが、チームとして意図したものでなかったとすれば、話は別だ。もし意図しないなかで、サウジアラビアに76.3%ものボール支配率を記録されたのであれば、それはすなわち、日本が圧倒されてしまったことを意味するからだ。

 たしかにアジアカップという大会だけを考えれば、どんな形でも勝ってベスト8に進出したという結果以上のものはないかもしれない。ただ同時に、準々決勝のベトナム戦や準決勝以降の戦いを含め、今後の森保ジャパンの成長過程を見ていくうえでは、この試合で見えた問題点をしっかり受け止めておく必要もある。

 そういう意味でも、森保ジャパンがサウジアラビア戦に対してどのような狙いをもって臨み、実際はどのような現象が起きていたのかという部分を、印象ではなく、事実に基づいて掘り下げることが肝要だ。

 まず、森保一監督がこの試合を迎えるにあたってチョイスしたスタメンは、グループステージ初戦のトルクメニスタン戦と、2戦目のオマーン戦とほぼ同じメンバー。オマーン戦との変更は、1トップに北川航也(清水エスパルス)ではなく武藤嘉紀(ニューカッスル)を起用した点のみで、いわゆるAチームがスタメンに名を連ねた。

1 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る